見出し画像

【ファジル・サイ ピアノリサイタル 於アクロス福岡シンフォニーホール】~軍神マルスから芸術の神アポローンまで?~


 アクロス福岡シンフォニーホールリニューアル記念事業として、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を3人の鍵盤奏者が演奏する第2弾がトルコ出身のピアニスト・ファジル・サイ。
*第1陣は中国人ピアニストラン・ランだったがこのコンサートには行けなかった。第3陣はチェンバロ奏者小林道夫氏

 よくわからず出かけ、席でプログラムの解説を読むと、「ゴルトベルク変奏曲」は不眠症に悩むカイザーリンク伯という方がバッハに作曲を依頼した作品らしいということ、32曲!で構成されていることを知る…。

 演奏が始まると、バッハってこんなに力強いんだ!と思う演奏。
 男性女性の差別化は最近、あまりよろしくないと言われる風潮だが、ファジル・サイ氏の演奏は、男性ピアニストの演奏! 
 女性ピアニストではあの音は出せないだろうと思われる力強さ。

 さて、宗教的なイメージのあるバッがなのだが、ファジル.サイ氏の演奏は宗教的というよりも力強い!頼もしい!ぶれない力強さを感じ、聴き続けていると、何故か、「ローマ神話の軍神マルスってこんな感じなのかしらん?」などとそんなイメージを彷彿させる。

 さらに1,800席、3階まであるアクロス福岡シンフォニーホールにおいて、ピアノソロなのに、「オーケストラ」を聴いているような錯覚を感じるほどの迫力!
「ピアノは小さなオーケストラ」とも言われるが、サイ氏の演奏に関して言えば、小さくなく、ホールの隅々まで響き渡るすごさ!
一方、広いホールの2F席で演奏を聴いているのだが、何故かおうちのサロンコンサートに呼ばれているような雰囲気もあり。
 1部の演奏が終わると万雷の拍手!

 2部はシューベルトのピアノ・ソナタ第19番ハ短調958,2部の演奏、1部のバッハとはまた違った演奏になってフォルテ、フォルテッシモ、ピアノ、ピアニッシモのコントラストがすごいなと思ってしまう。

オーケストラに負けないと思われる音量でピアノソロを奏でる一方、1,800席のどの席にも埋もれることなく響くピアニッシモに敬服…。

 どういうピアニストかよくわからずに来たのだけど、このファジル・サイ氏、生演奏でないと、この音量と強弱のメリハリ、わからないんじゃないのかなぁ?
 2部の演奏が終わり、また客席からは万雷の拍手。
 
 そして、みなが待ち焦がれたアンコールが始まり、私、さらに驚愕!
1,2部の力強い演奏は全く封印して(と私は思った)のショパンのノクターン「遺作」とドビュッシーの「月の光」の2曲。
 繊細の極みの「詩人」の演奏で、さっきの1部、2部、演奏していた人と同じだよね?と思ってしまった…。
ローマ神話の芸術の神アポロンが竪琴を奏でている…みたいな印象。

アンコールの選曲も含め、サプライズを演出するプログラムだったなぁ。
「私の演奏にはたくさんの”引き出し”があります!」と宣言されているようなプログラムであった。

 アンコールが終わった後、客席は総立ち、大入り満員ではなかったが、観客があんなに感動している様子にファジル・サイ氏、演奏家冥利ではなかったろうか。

 何も考えずに出かけた分、ファジル・サイ氏の演奏のインパクトに衝撃を受けた1月最後の日。
この迫力、CDでは判らなかったと思う。やはり生の演奏は真実を語る…である。
 帰りにトルコの方々と思しき観客の方々もいらして、同胞の素晴らしい演奏、誇らしかったろうなと思った帰り道。
#ファジルサイ #ゴルトベルク変奏曲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?