【静かなるスタンディングオベーション】兎、波を走る
ほぼ満席と思われる博多座1Fの観客席は静かなる総立ちで拍手。
観客のすべて(といって過言でない)が衝撃と深い感動で、立って拍手をせずにはいられない!そんな衝動に駆られてのスタンディングオベーションと賞賛の拍手、そんなに頻繁に起こることではないのではないか?
さて、何に対して、そのようなことが起こったのかといえば、「演劇!」なのである。
野田秀樹氏の『兎、波を走る』が博多座で上演されると知り、早々と先行予約を申し込み、抽選に当たっていたのが多分5月頃。
私が野田秀樹氏の演劇を観るのは、20年以上ぶり!
1980年~1990年代一世を風靡した劇団「夢の遊民社」の、その後期の作品をよく観に行ったもので、当時は脚本も買って読むという熱の入れようだった。
(今は本も無くしてしまい、取っていたらよかったなぁと後悔する事しきり。)
かなりの作品数を観たと思うのだが、野田氏の作品は何せ難解というか複雑というか重層構造を構築する舞台のあらすじで、とても説明できず、今の私の記憶のには印象的な場面が残っているくらいで、完全に覚えいているのは、情けないが、少ない。
今回の観劇は、ほぼ20年ぶり以上だったが、昔、観た野田ワールドの「言、葉」遊びとも言える言葉の使いこなし、新たな言葉へ誘う技は相変わらず見事でだった。
またかなり早口の台詞回しも相変わらずで、最初は少し聞き取れず、しかし聞いているうちに耳が慣れてきてわかるようになるパターンを踏み、結果、めくるめく世界の往来、今、よく言われているパワラルワールドへ誘われ、現実か幻想か、夢か現かわからぬ世界に引き込まれた時間だった。
今回の作品は、全く何も調べず、行ったが故にその内容は衝撃的だった。
不条理の告発と抗議!
その強い意思を作品に練り込み、まぶしこみ、その上で観客へ問題提起していた。(と思う)
繰り返しになるが、全く心の準備をせずに行ったが故に、"不意打ち"を食らったようなインパクトを受けた。
それはあたかも、ずっしりと心に重石を乗せられたような…と言おうか。
これからご覧になる方々もいらっしゃるだろうから、あらすじは語らず…
そもそもあらすじを語るには、至難の難解さがあるから、無理なのであるが。
本日の作品のインパクトからくる私への提言…
"やむにやまれなかったとは言え、罪のない人の人生を狂わせ、どん底に突き落としてしまったら…。"
"どんなに償ってもあがなっても許されないことをしてしまったとしたら…。"
ずしんと"重たいもの"を心に乗せてもらうための作品だったのである。
そして、ボーと他人事のように世の中を眺めるんじゃなくて、しっかりことの本質を見つめよ!考えよ!なんだろうなと思いながら帰路についた次第…。
※出演の高橋一生氏、松たか子氏、多部未華子氏の有名俳優陣の名演も相まり、舞台と客席の共有のエネルギー、すごかった。
これはリアルではないと、経験できないことなんだよねとも痛感した次第。
#兎波を走る #博多座