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【およそ54年前、「モーレツからビューティフルへ」という名作TVCMがあった】

写真は世田谷・豪徳寺の紅葉(2024年12月撮影)

そのTVCM(富士ゼロックス)はYouTubeで視聴可能。

1970年、私は当時12歳(中学1年)だったが、このTVCMはよく覚えている。
まだ子供でどこまで理解していたかはわからないが、シンプルで刺激的なキャッチコピーも含めて「カッコイイTVCMだな」と感じたことは記憶がある。ちょうどロック音楽を聴き始めた頃だ。
あらためて見ると、サディスティック・ミカ・バンド結成前、23歳の加藤和彦が出演している。ロケ地は銀座だろう。映像もわざとぼかした独独のもので、私が知る1970年当時のサイケデリック調の雰囲気。
 
1970年は大阪万博の年で(私は東京から母に連れられて行っている)、まだ
日本は高度経済成長の時期だった。モーレツと言う言葉は当時流行語の一つで、ミニスカートの小川ローザが言う「オー、モーレツ」という少しエッチなTVCMが大流行したのも有名。
赤塚不二夫の作品にも「もーれつア太郎」(ニャロメ、ケムンパス、べしなどのキャラクターが登場)があった。
 
「モーレツ」と言う言葉は、現在ではあまり使われることはなく死語に近いが、私が今、「モーレツ」と感じていることが2つある。

❶「東京各地のすさまじい再開発の超高層ビル建設ラッシュ」
❷「インターネット、YouTube、SNS等のメディア空間」

まずは❶。
私は東京生まれ、育ちで現在も都内で暮らしているが、東京のことをよく知っている者でも、これだけ都内各地で次々と再開発事業が行われ、超高層ビルが次々に建つのは戸惑いがある。

昔というのはいつを指すかは微妙だが、以前は再開発で新しい超高層ビルや商業施設が出来たとニュース等で見れば「一度行ってみよう」と思うことも多かった。
今はまず行きたいと思わないし、新しい超高層ビルの名前などこれだけ多いと覚えられない。残念ながらデザイン的にそそられる超高層ビルもほとんど無い。どれも同じような没個性のビルに見えてしまう。もともと私は東京でも古い街並みや、京都などの神社仏閣が好きなので、再開発で街並みが変わってしまうのは、東京が故郷の者としてなかなかツライ。

もちろんすべての再開発に嫌悪感があるかといえばそんなことはない。例えば、私はそれほど馴染みのある場所ではないが、下北沢の再開発(小田急線の地下化による元線路の場所の再開発)などは、散策路としてとてもいい雰囲気だと感じた。

やはり最も嫌悪感があるのは渋谷。
私は大学を卒業(1982)して最初に勤めた会社は渋谷にあったので、渋谷には行きつけの渋い居酒屋やショットバー、ジャズバーなどがいくつかあった。
10年くらい前までは、懐かしさもあり馴染みの店にもたまに顔を出していた。そんな馴染みだったいい店は、現在の渋谷の大規模再開発でほぼすべて姿を消してしまった。従って渋谷に行く機会は減った。
駅を降りて次々と建った超高層ビルに囲まれるとなんともいえない圧迫感がある。たまにシネマヴェーラ渋谷という名画座に旧作日本映画を観に行く程度。
少し離れた高台の「奥渋」あたりはいい雰囲気が残っているが。渋谷に関しては、私だけでなく友人、知人もほぼ同じ感想のよう。
 
続いて❷。
最近よく使われる「オールドメディア」。
私自身も地上波やBSのテレビ番組は興味のありそうな番組(映画や文化・芸術系が多い)をブルーレイレコーダーの番組表で録画して見る。
そしてワイドショー、バラエティそしてニュース番組もほぼ見ない。
ニュースのリアルタイム視聴は地震や台風などの情報に限られる。
圧倒的に見ているのはYouTube番組、インターネットのニュースサイト、SNSの書き込みなどだ。

最近の選挙に関する情報の洪水が典型例だが、ユーチューバーの一部などに見られる、とにかく目立つタイトル(デザイン感覚が欠如)や知性の感じられない内容、ビュー数を増やすためには手段を選ばない手法、中傷、誹謗、根拠のないフェイクらしき不明情報が連日飛び交うようなインターネット空間全体が「モーレツ状態」ではないかと。インターネットメディアの「コタツ記事」も目立つ。
それは「あざとい」「品が無い」「手抜き」と言い換えることもできる。

インターネット、YouTube、SNSなどは、もっと常識的に落ち着いた環境にならないものかとつくづく思うのである。
基本は「情報に流されないでまずは自分で考える」ことだろう。
インターネットについてではないが、私の敬愛する哲学者・フランス文学者の森有正は、50数年前に同様のことを書籍で書いていた。
冒頭のフレーズを使えば、「今後インターネット、YouTube、SNSはビューティフルなメディアを目指すべき」ではないか。

私は10代の若い頃から60代半ばの現在まで、「知性」「美しさ」「親切心」「思考」(論理性、正確性、具体性など)「センスの良さ」「品の良さ」「お洒落」などの要素を少しでも身に付けようとして、仕事でもプライベートでも過ごして来た。どこまで身に付けられたかには自信がないが・・・

私が「ビューティフル」を学び、自分の中で体感していったのは、やはり映画、音楽、美術、書籍、そして都内や旅行先での四季それぞれの美しい風景などが大きい。
なかでも音楽では、初めて聴いたおよそ45年前から今に至るまで、何度聴いても「美しい!」とつぶやいてしまうのが、モーリス・ラヴェル作曲のバレエ音楽「ダフニスとクロエ」の「夜明け(Lever du jour)」の場面
下記YouTubeは途中の「夜明け」から始まるショートバージョンの第二組曲。
キース・ジャレットの「ケルンコンサート」と並んで、私にとっては二大ビューティフル・ミュージック」である。


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