Mr.Children30周年記念ライブへ参加し、私が感じたこと
東京ドーム、バックスクリーン方面つm全面に設置された大きな山を彷彿させるようなエキシビジョン。その麓に置かれたドラムセット、キーボード。そして、客席前方に伸びる花道。
ついにこの時が帰ってきた。
2020年に始まったコロナパンデミックは、大規模イベントをことごとく中止に追い込んだ_。Mr.Childrenも多分に漏れずその影響を受けたアーティストの1つだ。
2019年、前アルバム「SOUND TRACKS」のレコーディングをロンドンで終えた彼らに待っていたのがコロナパンデミック。SOUND TRACKSのツアーはことごとく白紙撤回させられることになった。
私は、ファンクラブに入っていることもあり、彼らの近況は、ファンクラブ通信や、彼らがコロナ禍で再開した「誰も得しないラジオ(仮)」を通じて知ることができた。
活動ができないというもどかしさ_。
ファンを想う気持ち_。
そんなものが伝わってきた。
前作のアルバム、SOUND TRACKSにも滲み出ていたが、彼らが今追求しているものは、ファンに寄り添う音楽だ。ファンに寄り添う音、歌詞、ハーモニー。
こうしてまだライブが始まる前のステージを見ているだけで、そんなものを既にうっすらと感じ取ることができた。これからこの場所で奏でられる音楽たちは、きっと私たち観衆たちを魅了し、包み込むものになるのだろうと。
18時10分
定刻を少し過ぎたところでアナウンスが流れる。コンサートの開始を告げるいつものやつ。アナウンスが終わり、照明が一気に消灯する。
さぁ、いよいよライブが始まる。
圧巻のプロローグを終え、彼らのサウンドが会場全体に鳴り響く。
ターン、ターン、ターン、軽やかなギターの音とともエキシビジョンに包まれていた幕が上がる。
Brand new planetの歌詞とともに、私の心は解き放たれた。
「戻ってきたんだな、この場所に。」
今回のライブから私が感じたこと
一言で言うならば、今回のライブ、従来のライブに比べ、かなり大きな異色性を感じた。
ツアータイトルしかり、選曲しかり、演出しかり。
ツアータイトルは、"半世紀へのエントランス"
このツアータイトルを見た時、私は率直に意外さを感じた。
ファンはこれまで、「終わり」という言葉や、バンドの集大成を想起させるような作品を目の当たりにし、度々バンドの終焉を感じる場面に遭遇してきた。ミスチルは常に解散を匂わせてくるバンド、そんなふうに感じていたのだ。
そんな中で発表された今回のツアータイトルには、「エントランス」という言葉が含まれていた。これは今までのミスチルから考えるとかなり異色なもののように映った。
そこには、未来へ向けて活動する意志が強くはっきりと表されていた。
実際のライブでもそれを感じ取ることができた。その特徴を最も表していたのが、最後に演奏された楽曲「生きろ」だ。
この曲は誰に向けて書かれたものなのだろう?と考えたとき、そりゃもちろんファンなのだろうけれど、もしかすると彼ら自身にも向けられたものだったのかもしれないと感じた。
半世紀へのエントランスが、デビュー30周年の2022年なのだとすると、実際の半世紀は、デビュー50年目、つまり2042年になる。そうなると、彼らは70代になり、ファンも多くが50代60代を迎えることになる。
その時までMr.Childrenが、そしてそのファンが、笑顔でライブ会場に来られる日が来るのを願って放たれたメッセージなのだと感じることができた。
意外だった選曲の数々
ミスチルのライブといえば、多くは比較的近年リリースされた曲を中心に演奏するのが特徴だ。innocent worldといったライブでの定番はあるとはいえ、Tomorrow never knowsやCROSS ROADといった初期のヒット曲をライブで演奏することはそれほど多くない。
ちょうどベストアルバムが発売されるタイミングでの30周年ツアーということもあって、私は、ここ10年でリリースされた代表曲が今回演奏される曲の中心だろうと思っていた。
しかし、蓋を開けてみるとそれは意外な選曲だった。
・1992 ~ 2001の楽曲: 6曲
・2002 ~ 2011の楽曲: 9曲
・2012 ~ 2022の楽曲: 8曲
直近10年(2012年~22年)には、今年リリースされた新曲2曲(永遠、生きろ)と、コロナ禍でツアー未開催のアルバム(SOUND TRACKS)から4曲が含まれていたことを鑑みると、実質2012年〜19年までにリリースされた楽曲で演奏したのは、たった2曲だったいうことになる。
ここからも何かメッセージを感じ取ることができた。
思い返してみると、今回のライブ、また先日発売されたベストアルバムに含まれていたDVDの映像からも、彼らがデビュー当時を振り返り、そこから彼らがどう変わってきたのか?を振り返る場面があった。
そこにあったのは、リリースされた時期に関係なく、自分達に今届けられる最高の音楽を、最新バージョンとして、一心にファンに届けていきたいという想いだ。
だから、今回の選曲は、どの曲を届けたいではなく、どのハーモニーを届けたいだったのだと感じ取ることができた。
単に、代表曲であるTomorrow never knowsを届けたい
ではなく、
Tomorrow never knowsという素材を使った今できる最高の"ヒトサラ"を届けたいという想いだ。
だからこそ、年代モノの曲が多かったのだろう。
細部にこだわり抜いた演出
毎回ミスチルのライブに行くたびに進化を感じる演出効果。本ライブでもそれは圧巻であった。
両サイドのエキシビジョンのみならず、中心に聳え立つ巨大な山のようなエキシビジョン、稼働するパネル。
今回のライブで驚いたのが、多くの楽曲で、それぞれの楽曲に合わせたオリジナルの映像、アニメーションが、プロローグとしてのみならず演奏中の演出にも使われていたことだ。
彼らが今回のライブの中で表現したい世界観が、セット全体で表現されていた。
中でも印象深かったのは、新曲「永遠」演奏時の演出効果。これからライブに行く方もいらっしゃると思うので、ここでは深くは触れないが、演奏のみならず、その映像にも魅了される時間であった。
いい歳を重ねよう、Mr.Childrenとともに
つまるところこういうことだ。
ライブでの彼らの演奏を見ていて毎回感じることだが、年を追うごとに進化を感じる。それはプレイが上手くなったとかそういうことではなく、同じ楽曲であっても奏で方や演出に味わいや深みが出てきているということだ。
年齢を重ねるごとに深まるサウンド、メッセージ性。以前はそういうものがなかったという訳ではないが、同じ曲を披露するとしても、また違ったもののように聞こえるのだ。
それはもちろん技術的な面や、使っている機材の進化からもくるのだろうが、それだけでなく、よりファンに寄り添おうとする想いや感謝の心から来ているものとも受け取れる。
彼らは常に最高のパフォーマンスをファンに見せるために、進化を続け、鍛錬を積み、自分達を変化させてきているのだ。
翻ってみて、ファンである私自身にできることは何だろうか?
これからもミスチルのファンを味わい切るためにできることは??
私が考えた答えはこうだ。
置かれた日常を受け入れ、時にもがき、苦しみつつも、そんな日々に感謝し、そんな日々を楽しみ、自分らしく前を向いて、1日1日を生きていくこと。
そう、思いっきり笑う2042年を目指して、41歳の私はこれからもありたい自分の姿を追いかけ、問いかけ続けるのだ。
きっと笑える、その日を胸に_。