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アトレーユでの思い出 | あの日あの時あの場所で〜新しい私に出会えたキッカケ〜

今でも忘れられない旅がある。もう20年も前の話だ。赤ん坊が大学生になるくらいの年月、それくらいずっと昔の話_。

2001年夏、私は北海道にいた。人生初、実家を離れ1ヶ月間、私は住み込みでアルバイトをしていた。

北海道といっても札幌、旭川といった都市ではない。道東・弟子屈。札幌から350kmも離れたまさに秘境だ。釧路川の源流が流れ、日本最大のカルデラ湖としても有名な屈斜路湖が近くにある。まさに大自然の中。

そんな一角に小さなペンションがある。名前はアトレーユ。冒険のファンタジー映画「ネバーエンディングストーリー」の主人公の名前から付けられたこのペンションから、私の新たな物語ははじまった。

きっかけ

きっかけは旅行雑誌「るるぶ」だった。立ち読みをしていて偶然見つけたのがこのペンション。大自然に佇むログハウス、暖かみのある雰囲気のレストラン、ゲストルームの写真。素敵だなぁと写真を眺めていると、隅の方に小さく文字が。

住み込みアルバイト募集しています。

え!?バイトできるの?

胸のざわつきを覚えた。数日悩んだ末、どうしても感情が抑えられず、とりあえずメールを送ってみることにした。

アルバイトに興味があるのですが、採用はされていますでしょうか?

しばらくすると返信(いや、確か電話)があった。

アルバイト代はそんなにお支払いできないのですが、それでも来ていただけるのであれば、ありがたいです。

新たな時計が動き出した瞬間だった。

冒険のはじまり

どうすればお金をかけず、かつ愉快な旅ができるだろうか?そんなことを考えていた。だから最初から飛行機は選択肢に入れていなかった。

私が考えついたルートは次の通りだ。

旅のルート

滋賀にある実家から京都市内を抜けて舞鶴港へ(ここまでは友人の送迎)、そこから新日本海フェリーで小樽へ。小樽からは極力在来線で進み、途中一部特急も使いながら釧路へ。釧路で一泊した後、釧網本線に乗って摩周駅というルートだった。

時間はかかったが、旅を楽しみつつも目的地へ。ペンションの方に摩周駅まで迎えに来てもらい、ついに私はアトレーユに到着した。

新しい私に出会えたキッカケ

大自然の中にポツンと佇むログハウス。その前にはカナディアンカヌーが置かれている。

中に入ると犬たちがお出迎えしてくれた。初めて訪れたにもかかわらず、どこか居心地の良さを感じる場所。カウンターに置かれた片付け前の食器やグラスたち。その目線の先には、自然光が窓から差し込む素敵な食堂。

ログハウスは、オーナーが自らチェーンソーで丸太を切って建てたもの。家をDIYする人に初めて会った。しかし、すごい完成度だ。

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ペンションには他に住み込みで働いている人たちが何人かいた。プロのカヌーガイドを目指している人、教師を目指している人、学校を辞めてこの地にやってきた少年。皆私を暖かく迎え入れてくれた。どの人たちも、私が普通に大学生活を送っていたら出会うことのない人たちばかりだ。中でも一番暖かく迎えてくれたのは、学校を辞めてこの地にやってきたその少年だっだ。

金髪でロングヘアーをした彼は、みんなに「たけちゃん」と呼ばれていた。彼は見た目からも、そして内面的にも、私がそれまで絡んだことのないタイプの人物だった。反対に彼は私のことを「王子」と呼んだ。それくらい彼からしても私は会うことのないタイプの人間だったのだろう。

たけちゃんは、見た目とは対照的に、ペンションでの仕事との向き合い方・対応は、誠実さそのものだ。彼は丁寧にペンションでの仕事を教えてくれた。ベッドメイキングのやり方、ユニットバス掃除方法、戦略的な掃除機のかけ方など。たけちゃんのお陰で、私の業務効率は、日を追うごとに上がっていった。

しばらくすると、私は昼の休憩時間に彼や他のメンバーを誘って、近くを散策するようになった。私は根っから散策好きだったし、せっかくここまで来たんだから綺麗な景色もたくさん見たいと思っていた。

摩周湖・神の子池・津別峠・そして、釧路川。いろんなところを散策した。私がアルバイトメンバーに加わったことで、新たな調和が生まれているような気がした。

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今振り返って思うこと

約1ヶ月の滞在はあっという間に終わった。最後の日、名残惜しい気持ちを持ちつつ、この場を後にしたことを記憶している。この体験を通じて、私の物の見方、価値観は少しずつ変わろう

それまで私は、人生には決められた成功の道があり、それを探すために大学に行くのだと思って生活していた。しかし、これをきっかけに、私は人生の多様性を学んだ気がする。

何も、いい大学を出ていい会社に入ることだけが成功への唯一の道ではないと。それよりも、もっと自分がやりたいと思うこと、ワクワクすることに素直に向き合うことこそ大切だと。

自分の気持ちと素直に向き合い、それに向かって行動していく。その行動が、新たなインスピレーション、コラボレーションを生み出すきっかけとなり、また新たな自分のワクワクにつながる。

そして、ふと自分がこうして20年という長い歳月を振り返ったみた瞬間に、自分が通ってきた道に対し、ある種の成功を感じるのだろうと思う。

きっかけは「るるぶ」を手に取ったこと。さぁ新たな旅立ちのために、新たな「るるぶ」を探しに行こうか。

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