やっぱ愛って大事
【おくすりなんてやっぱいらないんだ!】
って1番最初に思った経験
ここからは、これまでの15年間を振り返って、自分に残るメッセージを吐き出していこっと。そしたら、きっとこれまでの経験が改めて自分の力になるだろうし、新しいスタートも切れそうだしね
医療に携わって3〜4年経った頃かなぁ。ようやっと仕事に慣れて周りが見えてきた頃だよね。調剤薬局に勤めてた時にあった事。
精神科に通う若い患者さん。長身で眼光鋭い芥川龍之介似のお兄さん。いつも不機嫌そうで、でも無気力な感じ。待合室で重いオーラを放ちながらおくすりを待ってた。怖いんだけど、でも何だか気になるのはちょいと好きだったのかもしれない。
なかなかコントロールが難しいのか、毎週一つ、また一つとおくすりが増えていくんだよね。と、思えば微妙に2錠が1錠に減っていた事を見落として、また作り直しては、待合室がまたまた重いオーラに包まれる、と。
おくすりがどこまで増えても、芥川さん(似)の表情は冴えない。
そんなある日、同じく精神科からの処方箋を持って綺麗なストレートの髪をした可愛らしい眼鏡っ子な女性がやってきたの。それから、しばらく待合室で彼女が待っている間に、芥川さんがやってくるわけ。
2人は既に病院内でも会っていたのか、何か会話をしてた。とても良い雰囲気。
それから、2人は診察日が一緒なのか、大体同じタイミングでくる様になり、やがて一緒に楽しげに会話しながら来局して処方箋を出して、おくすりを待つ様になるの。待合室でおくすりを待つ芥川さんの重いオーラはいつの間にかなくなってた。
しかも、あの山の様にあったおくすりの数が週を追う毎に、みるみる減っていき、終に2種類しかなくなった次の週から2人は薬局に来なくなったんだよ。おくすりなんて要らなくなったわけ。
2人、待合室でお話している時の表情を見れば、もうおくすりなんて要らないのは誰にでもわかる。すごく良い映画を見せてもらったような、そんな経験だったな。
やっぱ、人に必要なものっておくすりじゃないんだよね。もっと大事なものがあるって事、教えて貰った。