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「怪物」

※ネタバレというほどの感想ではないですが、1ミリも何も知識無く観るのが好きな人は読まないでください

この映画観て、強く思ったのは、偏った考え方でまず見たものしか信じられない自分の想像力のなさです。恥ずかしくなりました。
この映画は、母親の目線、教師の目線、少年たちの目線、で同じ時系列をそれぞれで見ていくのだけど、最初は母親だけの目線で見えていた世界が、だんだん紐解かれてくと共に、少年たちに寄り添って見えていく感じで進んでいきます。そこが面白かった。最初から最後まで、心底苦しくなる場面や心情が多くて(それもやはり坂元脚本、是枝作品ならではのリアリティと丁寧な描かれ方なのでより苦しくなる)ずっと、胃と頭が痛くなることの連続なんだけど、続きや展開が気になってしょうがなかった。この辛い現実から目を背けたいんだけど、一筋の光を信じて、続きを追わずにはいられなかった。
脚本担当した坂元裕二は、パンフレットのインタビューにて、この物語のモチーフのひとつとして、自分の過去の経験も参考にしていると書いてあった。自分が車の運転中に目の前にトラックがいて、信号が青になっても動かず何度かクラクションを鳴らしたけど動かなかったが、その後分かったのが、トラックは前を横切る車椅子?か何かの人が渡りきるのを待っていただけだった…そういう経験やその時の感情等もモチーフにしているとあった。まさにこの映画を見た上で恥ずかしくなった自分の感情だと感じたし、この映画を象徴してもいる出来事だった。また、映画の中だけじゃなくて、仕事や生活していく中でも毎日何度となく実は対面してる事を描いているなと。ただ、それだけをテーマにして描いてる訳でもなく、少年達の苦悩を映画の主体にしようとしている訳でもない、(これもパンフの受け売りですが)だんだんと展開を紐解くに連れて、物語を起承転結の結に向けて進めてはいなくて、ただ少年の心に寄り添って進んでいくところが流石で、また新しい映画の形を見た気がした。私達は、映画もドラマも小説でも、起承転結を追いながら進めてしまう傾向があるし、子どもや少年を主人公として置いてる作品は、その子達の苦悩をテーマとして、もっと嫌な言い方すれば売りものにしてるものが多いけど、そういう作品を作ろうとした訳じゃないんだなと…。目から鱗だった。固定概念や見たものだけを繋ぎ合わせて答え合わせしようとしちゃう自分が本当に恥ずかしくなった。
今回は是枝裕和監督×坂元裕二脚本で、私の好きな監督と好きな脚本家の作品なので最高だったし、期待も裏切らない内容でしたが、改めて私は坂元裕二脚本が好きです…!!人物像の作り方やひとつひとつの台詞が、ほんとの意味でもある意味でも魅力的で、ずっと翻弄されてました。この映画を観た私は、恥を感じながらもずっと翻弄されていた、という感想が正しいかも。
また映画界の宝物みたいな映画が増えたなと思いました。

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