インフルエンザと車寅次郎と渥美清と
インフルエンザに罹っちゃいまして。
や、正確にいうとまだ罹ってて。
ご予約いただいてたお客様にお断りなんぞをさせてもらって、
自宅の寝室に篭りきっての療養はいよいよ今日で5日目。
会社を休んで関係者の方々にご迷惑をかけたりとか、
家族にも多かれ少なからで迷惑かけてるとか、
四方八方に「申し訳ない」って頭を下げまくりたい気持ちなんですけど、
少々としんどかった熱も2日目の晩には下がってから、
療養の目的がウイルスを撒き散らかしてはならない、
という段階に入ると大した不調なんかはないもんだから、
暇が過ぎるんですよね。
で、
オーディブルで本を聴いてみたり、
radikoでラジオを聴いてみたり、
スマホでニュースを流し読みしたり、
iPadでYouTubeをふらついてみたり、
Amazonプライムで「男はつらいよ」の第一作目を観たり^^;
『「お部屋で満喫のんびり4泊5日〜食事は3食お部屋出しプラン〜」
セミダブル1名利用』
インフルエンザA型(+)と印字された用紙を受け取ることで
強制的に買わされたプランみたいなのにチェックインして
そんなこんなを駆使して時間を消費して、
明日の朝にいよいよチェックアウトする。
そんな感じです。
今日までの、
埋めても漏れるように余る時間の帯をどう消費するかって時に、
なるべく有意義に過ごしたい、
とかって思うんです。
人に迷惑をかけて休んでるという燻んだ灰色の申し訳ない感を
健康と成長のために授かった休みだとした澄んだ空色の有意義感で塗りつぶしたい。
なんて思う。
これって、自分の絵を自分で評価するんじゃなくて、
他人が自分の絵をどう評価するのか?っていう
虚栄心とか自尊心とか恐怖心とかって
ミスチルの桜井さんが散弾銃で仕留めたいって詩ってる
モンスターの遺伝子がワタシにもテケテケ組み込まれてる証拠でもあったりで、
好きじゃないけど仕方ないな。
みたいなやつで、
自宅で5日間篭ってだけど、
「オレ、そこそこ有意義に使わせてもらって、」
「なんなら多少はプラスなったし、」
「てか、プラスに変えちゃう?みたいな?」
とか、言わないけど、
喉元まで言いかけるやつ。
で、
ワタシなりに、
本よりラジオよりネットニュースよりYouTubeより、
虚栄心とか自尊心とかを満たしてくれて恐怖からちょっと逃れられて
(有意義だなぁ)
って時間だと思えるのが映画を観ることなんだな
って感じたんです。
(あー、)
(オレん中の有意義感、)
(映画ツエーんだな。)
って。
30代の常連のお客さんが全作観たんだと聴いてて、
ワタシは季節ごとにテレビでやってた寅さんをちゃんと全部観た覚えのない
「男はつらいよ」シリーズ
その第一作目。
最高だったんです。
山田洋次という男が創作した車寅次郎という男は、
普通の人は隠して人には見せたくない
桜井さんが選択するところの虚栄心とか自尊心とか恐怖心とかが、
漏れてるというか流れてるというか吹き出してるようで、
(あ、)
(あんなんはどうかと思うけど、)
(あんなんもありなんかも、)
って思わせてくれて、
寅さんも寅さんにまつわる
さくらも、ひろしも、
おばちゃんも、おいちゃんも、
ごぜんさまも、タコ社長も
みんな笑ったり泣いたり怒ったりしてて、
それぞれモンスターの遺伝子がテケテケしてるんだろうけど、
柴又って場所と時間で人が奇妙に錯綜しながらバランスを取り合ってて、
オモロいんですよね。
(ん、)
(こういうことだわな、)
(いいんだよな。)
って。
一方で、
渥美清という役者、
倍賞美津子という役者、
このご本人たちご自身の虚栄心とか自尊心とか恐怖心なんかは、
微塵の中の微塵にも感じさせることなんかあるわけなくて、
彼らにとって当たり前なのかもしれない能力に感嘆もさせられちゃうんです。
ある意味でモンスターですよね。
役者さんって。
で、
オモロすぎていちいち笑えるんです。
車寅次郎を演じている渥美清が。
美しくて眩しすぎるんです。
車さくらを演じる倍賞美津子が。
(ん、)
(こりゃ無理だ、)
(スターは違う。)
って。
第一作では、
寅さんの妹であるさくらと、
タコ社長んとこで働くひろしが結婚するんですね。
その結婚式のシーンがあるんですけどね、
泣かされるんです。
大号泣しちゃいました。
映像が視力の問題でわかりづらくなったので、
よりセリフに対する意識と思い込みが強くなってるのかとか、
自分なりに分析してもよくわからないのですが
あんなにヒクヒクして眼球の黒目のど真ん中から涙が流れてるかのように
バッシャバシャ泣いたのは
(久々だなぁ)
って。
思えたら、
(有意義だなぁ)
って思えて。
海外旅行に行ってきて母国である日本の良さがわかるとかってベタな話のように、
病気によって強制的に休まざるを得ないことを経験すると、
健康で普通に仕事に行けることが、
(有意義だなぁ)
って、
これもゴテゴテのベタですけどね、
「お部屋で満喫のんびり4泊5日〜食事は3食お部屋だしプラン〜」
最後の夕飯は通常運転の晩酌で
締めくくって、
明日から6日振りの有意義な日常に戻るとします!