ココロの眼‐第一章 母
母は憂いていた。
認めたくはないが、一般的にいうならこれが〝引きこもり〟というやつなのだろう。受け入れたくはないが、受け入れるしかなかった。
まさか自分の息子が引きこもるだなんて想像もしなかったし、その現実を受け止めることの痛みは想像を超えていた。
さらに話を聴いているのかも定かでない無頓着な夫の返事は、ただ口から漏れているかのようなものだから耳には届いても刺さらなかったし、イライラさせた。
そんな自分を癒してくれる駅前のラフィネというリラクゼーション店に通っている。
自分のココロとカラダの充電なのか放電なのか、アロマの香りと心地良い時間とその後の軽くなる体感が、カラダの中で散らばった何かを整理をしてくれる感じは、自分から自分に贈る褒美なんだと思っている。
もうとても心を開くとは思えなくなっている息子を連れて、月に一度のカウンセリングを終えた帰り道だった。寝付きが悪く寝た気がしない夜を数日過ごしていた私は、ただただ横になって眠りたい。そんな気持ちでいつもは仕事の帰りに一人で行くラフィネに、その日は息子を連れて入った。
それは疲れてしまってそうせざるを得なかった、というのが正しいかもしれない。
彼はなんでも良かった。
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