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[作品展]藤ちょこさんの作品展「彩幻境」に行ってきた[雑感]

 以前の記事(これ→「[画集]藤ちょこさんの画集2冊を読んでみた[雑感]」)で画集について書かせて頂いた、藤ちょこさんの作品展に足を運んだので感想を書かせてもらおうと思います。
 以前にも触れた通り、自分は絵画について何か語れるほどの人間ではないので、本当に他愛のない感想文です。
 
 作品展の題は「彩幻境」。藤ちょこさんの2冊目の作品集と同じ名前で、公式サイトにも「画集発売記念作品展」と銘打たれている通り、本来なら画集の発売に合わせた2020年3月に開催される予定でした。
 コロナの拡大で延期になり、10月末から12月までの開催になりました。
 
 展示会場は青山のギャラリー、GoFa(公式サイト→ http://gofa.co.jp )。 
「Gallery of Fantastic art」の頭文字から取られており、ポップカルチャーとしてのマンガ、アニメなどの作品や作品設定にまつわる作品を展示するギャラリーのようです。
 普段からギャラリーに行ったりする人間では無いので相場は解らないのですが、展示会場としてはすこし手狭な印象でした。
 展示会場内がほとんど撮影OKなのはファンにとっては嬉しいかもしれないですね(自分は撮影していません)。
 
 展示会場へ向かう階段の中ほどにまず開催の挨拶があり、扉を開けると受付兼売店があります。
 カウンターにもライブペインティングの作品が並んでいて、展示会という作品の完成形に近付けているんだなぁ、という思いに。
 大雑把な構成はとして入り口から見て右手側は、いわゆる「一枚絵」としての絵画作品が主体のようで、大判の額縁やパネル加工の作品、マット上に複数枚で構成された作品が展示されていました。
 左手側は、カードゲームや音楽CDのコンセプトアート、Vtuberのデザイン画などの大型展示でまとまっているようです。
 理解しやすい構成で作品に入り込みやすいのはとても有り難いです。
 会期の中程ということもあるでしょうが、額装に少し乱れがあったのがすこし残念でした。
 それでも、普段は書籍、あるいはディスプレイという“媒体”で鑑賞している作品が、絵画という単体で独立した状態でそこに存在していると事こそが、展示会の最大の楽しみで、展示会という作品を作者がどう構築するかという所も見所だと思うのです。
 
 この展示会の場合、展示作品のほとんどは先んじて出版された画集に掲載されており、細部の観察や全体の構図造りはそちらで見ることができます。
 しかし、画集は書籍という媒体の特性上、ページをめくるという時系列が発生し、複数の絵を並立して鑑賞するのが難しいという欠点があります。
 また商業画集の場合、必ずしも主題に沿った作品だけで構成することが出来ない場合もあります。
 印刷サイズの制限や素材による表現の限定という問題もあり、画集はかならずしも作者の意図を反映しきれるものではないという前提で考える必要があります。
 
 今回の展示会の場合、複数の小・中規模サイズのイラストが複数枚並立したパネルと、額装された大判・超大判イラストを構成要素として、織り混ぜながら配置しています(当然ですが例外もあります)。
 展示点数は会場の広さや印刷サイズなどもありますが、画集掲載の作品がすべて展示されているわけではありません。正直なところ、個人的には物足りないくらいでした。
 しかし、逆に言えば作者として「彩幻境」を表現するのに最低限必要な要素は配置されているという事でもあるのです。
 細密に描き込まれた大判イラストで幻想世界のリアリティを表現しながら、色彩豊かなイラストを並べる事で、現実世界の境を曖昧にするように。
 さほど広くはない展示会場でしっかり世界観に没入できます。
 とても楽しく鑑賞することができました。
 
 展示会ならではの楽しみを2作品だけ。
「レトロ箱世界」(極彩少女世界p.176)の印刷原稿になる前の原画と印刷が並んでいました。
 印刷されたイラストと比べることで、紙の質感の違いや色の乗せ方、印刷で見えない画材を使用した光沢感など、“一枚の絵”への作者のこだわりが感じられた事です。
 おそらく表現の基礎の部分がアナログの色なのかもしれないな、と勝手に思いました。
 デジタルで描いていても、表現のニュアンスとしてアナログ画材の曖昧さを確実に表現しているような。
 色鉛筆の乗り切らない彩度や、水彩画の滲みと濁り、アクリル絵具の硬質な塗り分け。それらの表現が上手くて、デジタルならではのクリアで高コントラストな部分とのバランスを取っているのかもしれない。
 本当に勝手な想像で申し訳ない限りですが。
 2点目は「白昼月下狐仙図」(彩幻境p.026)。
 もともと縦長の構図で画集の中でもすこし異質な作品だったのですが、展示は更に手が混んでいて、掛け軸として加工されていました。
 緑が基調の背景に、赤い着物を着た狐の姫様、という非常に色彩と画面構成のバランスが良い作品なのですが、そこに縦長の構図を最大に活かす掛け軸というステージが与えられたことで、また鶯色の落ち着いた色と、円を基調とした僅かな刺繍で、矩形の画面と色彩にぐっと引き込まれる作品になっていました。
 イラストが印刷されている紙は平面的なものでしたが、周辺の布部分の細かな凹凸、施された刺繍によって、イラスト部分がより際立つように設計されています。
 こういう表現が出来るのは実物がそこにある展示会ならではだと思うのです。
 
 思いつくまま書き殴ってしまったので、大変読みづらい文章だと思いますが、概ね思ったことは書けたと思います。
 可能ならしっかり画集に目を通した上で、もう一度行こうか考えているところです。
 画集はあくまで“見る”もので、そこには視覚的な記憶が主になります。
 しかし、展示会は“体験する”ものです。作品と自分がそこに存在し、自分は身体全体で作品に向き合います。
 会場の音や空気、展示作品への照明、距離感覚、作品の立体感などの視覚情報。それら全て含めて「展示会」という作品です。
 自分の好きな作家さんの作品を体感できる貴重な機会を得られるのは、とても有り難い事です。
 もしこれを読んだ方で興味が出たのであれば、ぜひ一度足を運んでみてください。
 
展示会情報

会場:GoFa( Gallary of Fantastic art )
会期:2020年10月31日-12月6日
入場券:700円(現地販売あり)
 → http://gofa.co.jp/exhibition/藤ちょこ画集発売記念作品展「彩幻境」/


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