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交点Yを求めよ

先の平成シリーズでは、平成という一時代の中で起こった出来事などを書き連ねたが、その中で「別の話」としたエピソードや平成以前にも俺なりの恋愛観を語る上で必要なものがちりばめられているので、それらを絡めつつ書いていこうと思う。

初めてのゲイ活・初めての恋人は平成に入ってからだったが、昭和に何もなかったわけでもない。近所の本屋には薔薇族とさぶが陳列されていて、足繁く立ち読みしに行ったり、希に買ったり、一度モーションかけられて怖くなってスルーしたりした(中学生やぞ!)。思えばこの本屋の店長、フケ専の人にはモテそうな風貌ではあったな。
で、初めて本格的に恋愛感情を抱き、胸が苦しくなるほど恋い焦がれたのは、平成に入る少し前の高校時代、2年生だった。平成第1回で「別の話」として前触れしたので参照されたい。相手はド定番トラディショナルスタンダードステレオタイプありがちなことに、体育教師。当時10コ上の26~7歳で日○大剣道部出身スポーツ刈りがっちり毛深濃いめアニキ系というトリプル役満野郎だった。野球部顧問でもある。
ここでこの頃の俺の体育的ステータスをおさえておきたい。体型は現在からは考えられない所謂キショガリで、身体を動かすことは授業以外特にせず、なれど決して運動音痴ではないというかセンスはある方だと思うしまぁまぁ脚も速い方だが筋力不足がネックで、コミュ障故に団体競技が苦手。
担任になった当初は、そりゃ相手は教師だし、年齢的にも教師としても若さ故のウザさもあったし、なんなら体のデカい同級生の方に微かな恋心のような単なる欲情のようなものが湧きはじめていたくらいなんだけど、季節が夏を迎えた辺りからどうも周囲の様子が少しずつおかしくなっていった。男子全員とは言わないが体育系部活動の連中はこの教師(以後Yと表記する)の何かを知っている風だった。極めつけがプール授業関連で、

・更衣室で着替えながらの同級生とのバカ話がYの話になり、「Yめっちゃ毛深い。」 → 「俺氏、足毛深くね?」 → 「Yがお前のこと『まるで幽霊みたいな奴だな(意味不明)』って言ってたぞ。」 → 「(ケツを突き出し)先生! 入れてください! とかやってみ!?」という流れに。
・(黄色は透けると知らず購入した)黄色い水着着用で授業に臨む。その次回のプール授業でYの水着が、ペアルックレベルの似たような黄色い水着にお色直し。
・「2人ずつペアを組んで開いて立った足の間を潜水でくぐる」というのをやるのに、まずデモンストレーションで「水中へのエントリーが一番うまい」とのご指名でYの股をくぐることに。生徒数が奇数なのでそのままYとペアに。
・泳ぎ疲れてプールのフチに背中から寄りかかろうとしたら、いつの間にか背後にYがおり、俺の背中と毛深い胸が接触。
・授業終了後に片付けを手伝わされた後に更衣室に向かうと、皆はさっさと着替えを済ませ校舎に戻り最後になってしまったところに、いつもは体育教員室(だっけ?)で着替えるYが入ってきて着替えはじめた。急いで済ませ更衣室から出ようとしたところ、扉の鍵が不必要に施錠されていた。

それでなくても初回でがっちり毛深い全身これエロスな裸体を見せつけられているというのに、意識しないの無理でしょこれ。

小学6年~中学2年頃のどこかの期間でなんとなく自分はゲイなんだという自覚が定着して以降、この頃まで何もイベントが無かった俺は、やっぱりこの場面でも何も起きてないし起こせなかった。それでも、いやだからこそ日に日に想いは募り、秋の修学旅行にはYも同行していたので夜這いを考えなくもなかった。翌年担任が替わってからしばらく後に「偶然再会した同級生」と結婚するような話も聞いた。んだけど後に、いまだにハッキリ覚えていて忘れられない、俺が何か起こせたとしたらそこが最後だったなぁという場面がある。

卒業間近い、放課後遅めの人気の無い校舎。最後の部活途中に体育館の男子更衣室となりのトイレに行き、放尿をはじめたところでYが入ってきた。俺は3つならんだ小便器の左にいるが、Yは一つ空けるものだと思っていたら隣に陣取った。俺はとっくに排泄は終わっているのに、脈拍と血圧が上がって、動けない。Yも、とっくに終わっているだろうに、動かない。二人とも身長がそれなりにあるので、ちょっと顔を向ければ視界が仕切りを乗り越え、股間のたたずまいを眺めることができただろう。だがそれぞれに、正面あるいは自分の股間を見据え立ち尽くす二人。覗き込めばいいのか、後ろから抱きしめてやればいいのか、個室に押し込めばいいのか、思索を巡らすごとに血圧は上がって、頭が風船のように膨らんでいく感じがした。もうどのくらい時間が経ったのか、このままでは倒れてしまうと思い、俺が先に便器から離脱し、洗面台で手を洗う。洗いながら便器の方を見やると、Yはまだ立ち尽くし便器から離れない。手元を見るその様子が、うなだれているようにも見えた。生まれてから17年、その時まで味わったこともない激しい後悔と連れ立って、トイレを後にした。扉が閉まる瞬間まで、Yは立ち尽くしていた。

ホント、なんだったんだろう。
いや、人生の分岐点の一つだったんだろう。
あの時の、血圧の高さと、呼吸の荒さと、好きな気持ちと、ヤりたい気持ち。全部の時を止めて、あの頃に置いてきてしまった。何も起きなかったからこそ、Yへの想いは今でも歳をとらず、何も起こせなかったからこそ、Yとの妄想は今でも際限なく膨らむ。30年以上経った今でも、愛する恋人がいる今でも。
今でも、好きだってもんはどうしようもないんだよなぁ。

恋愛観1:
思い出は綺麗 本当より綺麗

感傷からか、ややポエミーになってしまった。
このエピソードの執筆を機に、自分に課した30年の禁を解いて、Yについてエゴサしてみた。
・現住所および固定電話番号
・転勤先の校名2件
・画像3点
・功績にまつわる文書
画像は40代半ばのものが1点、バストアップの雁首だけど、あのまんま歳を重ねたような雰囲気でとても美味しそうぉぃ。もう2点はここ数年以内と思われるが、なんというか、普通の柔和な壮年だった。
これら情報が得られるからといって、無論何するつもりもない。Yがそんな風に加齢で変わってきたように、俺も加齢で色々と汚れたり悟ったりスレたりしているので、当時の熱量では動けない。

恋愛観2:
お互いがどんなに想っていても、想っていることをお互いが知っていても、なお生涯決して交わることのない哀しい運命の点と点は存在する。

これについては他にも事例があったりするんだけど、それはまた別の話。

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