夢と希望だらけの平成元年
平成元年。
俺は大学1年生。
見栄っ張りでミーハーだった自分がバブル時代に大学生。
とにかく「女の子」にモテたくて必死だった。
華やかな大学生生活に憧れ、それを実行するのに必死だった。
女の子から「かっこいいね」と言われることがご褒美だった。
自分のセクシャリティについても、将来についても「なんとかなるんじゃね?」くらいの気持ちで生きていたし、世の中もそういう風潮があって「バブル世代はダメ」と言われる所以がそんなところにあるのかな。とにかく夢と希望にしか目を向けていなかった。
ただ、「普通の男ならここで女の子に手を出したくなるハズ」というシチュエーションになった時、自分が「普通ではない」ことを受け入れざるを得なかった。目を向けないわけにはいかなかった。
中高生の時と違って「流れで女の子の家に泊まることになった」「合コンの後になんとなく女の子と二人きりになってしまった」とかの機会が増えたしね。
当然、女の子には手を出さない(出せない)んだけど、そうすると「あの人は紳士」みたいに思われて、気がつくと女の子の方から迫られたり。
あの頃の俺にはゲイの友達は一人もいなかったし、今のようにSNSがあったわけでもない。俺にとってカムアウトすることは、ただ孤独になることを意味していた。
「ごめんね、俺ゲイなんだ」などと口が裂けても言えなかった。
バレないように必死に生きてはいたが、それを気に病むことはなかった。
はじめて自分のセクシャリティについて真剣に向き合ったのは部活の合宿での出来事。
ミーハーな俺はミーハーな体育会に入っていたんだけど、夏合宿で合宿所生活をしていた時、同期の一人に「モーホー」とか「イーゲー」とかのあだ名がついた。
きっかけは忘れてしまったけど、先輩がそう呼んでからかっていた。当の本人はどう見てもノンケでゲイの要素はないんだけど、「こいつが本当にゲイだったなら、俺の秘密をすべて打ち明けて違う世界が開けるのかな」と考えたり、「男同士が好き合うってどんなかな」と考えたりもした。
今まで自分でフタをしてたことに思いを馳せるようになった。
それでも、バレないようにバレないように...
他のみんなと一緒になって、そいつを「よ!イーゲー!」なんてからかって。
本当にゲイな俺に矛先が向かないように...
女の子にモテたいのはなんのため?その先に何があるの?
ちょっとビビり始めた平成元年。
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