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ウェディング・バンケット

平成中期。20代後半。
前回の平成初期以降もわたしは相変わらず自分がナニモノなのかを誰かに問い続けていた

自分じゃナニモノなのか分からないから誰かを通して何者になれるんじゃないかってそれこそ天使にだってなれるんじゃないかって

わたしの彼氏ぃ、あのイベントのオーガナイザーなんだよぉ
わたしの彼氏ぃ、2丁目にいくとみんなに声かけられちゃって困るぅ
わたしの彼氏ぃ、わたしの彼氏ぃ、わたしの彼氏ぃ

痛いよね、痛い
辛いよね、辛い
”虎の威を借る狐”ってこういうことよね、そこにわたしいないし

にしても「つれづれつづり」という企画は他のみなさまのドラマティックな展開を夢中になって読んでしまうし本当に愛しているし大好きだけど、自分が恥部としている人生の一部が描かれるからそれがエグくてエグくて枕に顔を埋めてあーーーーーーっ!ってなってる

なによりわたしつれづれつづりナンバー004以外でのSNSやリアル世界では「軽く天然のかわいいおじさん」でぶっ通しているから、自分の事「中の上で意外とモテる天使のはずだからガンガン恐れずオトコをひたすら喰らう」で売ってた過去とかホント営業妨害で困る

まぁ自分自身で書いてるんだけどね

そんな”虎の威を借る狐”は長続きせず、それでも元々恋愛ハードル低いで出会いにだけは恵まれており付き合ったオトコの数ばっかり増え続ける
平成中期に入る頃には振られ振られ振られの連続ですっかり翼の折れたエンジェル

ゲイバーで急激にアプローチしてきた可愛いボーイが彼氏に雇われた別れさせ屋だったり
レインボー祭りの夜泥棒猫と鉢合わせて二股かけられて傷ついてたら実際は三股だったり
目が覚めたら手錠でベッドつなげられててわたし軟禁されるくらい愛されてるって思っていたのに、夜遊びして同棲中の家に帰ったらチェーンがかかってて「キミの愛を信じられない」って締め出されたり

恥の多い生涯を送って来ました。 自分には、ゲイの恋愛というものが、見当つかないのです。

一つの恋愛が終わる度にもうオトコなんてシャボン玉だから彼氏なんていらないって自分の素行や性格は棚上げしたりして残念エピソードばかりが増えていく

それでもどこかで人生のパートナーは欲しかった
長く続いているカップルをみて羨ましいなって思ってた
自分にはそういった関係はできないのかなって枕を濡らしていた

平成中期になってもそんな恋愛を繰り返していた
ただすこしだけ年齢を重ねたわたしは『真摯に真摯に』は心掛けていた

そして円環の理に導かれるように出会えた12歳年上の新しい彼氏
職業もしっかりしていてルックスも◎とても頼りがいのある素敵な男性
これが最後の恋、一生のパートナーだわって神様に感謝した

けれど翼の折れたエンジェルに神様は冷たかった
浪費家・セックス中毒・ジャンキー(当時は合法)というトリニティがわたしを打ちのめすのも時間の問題だった

怒った
泣いた
飲んだ
泣いた

当時わたしが振られる度に「そのオトコは見る目がないねと」と優しく慰めてくれた大親友と呼ぶ女性がいた
生まれて初めて自分のセクシャリティをカミングアウトした人も彼女だった
だからそのときも泣きついた
けれどその子がわたしに言ったのはいつもと違い慰めではなかった

「それならわたしと一緒にならない?」

トレンディーな感じだけど実際には「YESって言ってくれなかったわたしはあなたの前から消えるから!」という張り詰めた脅し文句と共に告白された

それから1週間くらい悩んだ

ソレもありなのかもしれない
相手のジェンダーはともかく一生のパートナーが欲しいと思っていたし
自分の子供が欲しいと思っていたし
ゲイである自分が家庭を持つ
ソレもありなのかもしれない
なによりこの人をイマ友人として失いたくない

そしてわたしは彼女にYESと返答した

それからはもう自分の人生で三本の指が入るくらいガバガバな時間だった
もう1日36時間くらいないと足りないくらいって焦りまくるガバガバ

せっかくここまで読んでくれている004ファンの皆様だからこそサービスカットとして伝えるけれど実際のわたしは残念ながら三本も入りません
え、やだ、その目ちょっとエッチ

...
.......
...........
返答からの怒濤のガバガバエピソードはこんなかんじ

ご両親へのご挨拶で「おまえに娘はやらん!」という娘父の洗礼を受け、
三顧の礼でようやく結婚のお許しをいただき、
わたしの要求をすべて満たす式場を足を棒にして探し、
お色直しは新婦と同じ回数!とウェディングプランナーを困らせ、
ふたりのスイートな新居を探し、
新婦親族には新郎セクシャリティ他言無用の戒厳令を列席者に布き、

そうした怒濤の下準備を乗り越え「新婦と同じく計三回のお色直し」「新郎の歌謡ショー」「新郎 脚本/演出による出会いムービー披露」という“新郎に必要以上にスポットライトがあたる”ウェディング・バンケットの開催にこぎつけた

それからわたしたちは
民法第4編第2章が認めるところの
夫婦となった

あの頃は
わたしたちはセクシャリティを超えた
見せかけじゃない
ホンモノのパートナーになれる

少なくともわたしの方は
心の底からソレを疑うことのない
夫婦になったと思っていた


「わたしゲイって治るものだと思ってたの」
彼女の口からそう聞く
その日までは

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