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平成初期、性のめざめ

小学生・中学生と思春期を過ごした平成初期。

シャイでおとなしく容姿も平凡で、同窓会に出ても「えっと…誰だったっけ?」と言われてしまうような、クラスに沢山いるモブキャラの一人だったであろう自分。
そんな自分でも、人とは違った悩みを持ち始めたのが、小学生・中学生の頃でした。

小学校に入学して程なく、バブルが崩壊した。
もちろん当時子供だった自分にはそんなことはまったく理解できていなかったけれど、思い返してみるとこの頃を境に、家族を取り巻く環境が少しずつ変わっていった気がする。
父親の勤めていた工場が潰れ、新聞配達の仕事をするようになった。
近所の仲が良かった、おそらく父の同僚であった家族と疎遠になった。
親戚付き合いも一気に減り、親戚の家に遊びに行くことも無くなった。
数年に一度は行っていた家族旅行がぱったりと無くなった。
外食もめっきり減った。
それでも普段の生活には大きな影響はなく、贅沢はできなくなったけれど慎ましくも和やかな家庭だったように思う。

僕自身の小学校での生活は、ごくごくありふれたものでした。友達と遊んで、家に帰ってきたらゲームをして、勉強もそれなりに出来ていた。ご多分のゲイに漏れず、体育は苦手だった(特に集団球技)。家庭科が得意だったのも、因縁めいてるかもしれない。

7つも歳が離れた兄とは、この頃から仲が悪くなっていった。当時中学生で反抗期真っ只中だった兄は、僕にあたったり、パシリに使ったりするようになり、泣かされたことも何度かあった。兄弟なのに兄の持っている漫画やゲームは触らせてもらえず、兄弟なのに同じ漫画やゲーム機を持っているような状態。(兄は自分の物は好き放題使っていた)
そんな訳で兄に対して自分から接触することは無くなっていき、僕は自分の部屋で自分の世界に引きこもるようになった。

兄よりもさらに年上の姉は以前と変わらず可愛がってくれたものの、姉もグレてヤンキーと結婚して若くして娘を産み、すぐに離婚した。姪っ子ができたことで、小学校高学年にして早くも「叔父さん」になってしまったけれど、「小学生なのにおじさんだなんて、変なの。」くらいのもので、実感はまったく湧かなかった。
自分の身の回りでどんな事が起きているのか、理解するにはまだまだ幼すぎた。

その後、僕が中学生になった頃に、バツイチの姉は再婚した。中学校の学ランで参加した披露宴で、GLAYの「HOWEVER」と安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」が歌われていたのを、なぜかよく覚えている。当時の記憶はほとんど残ってないのに、歌のことははっきりと覚えているんだから、音楽と記憶の結びつきの力は凄いなと思う。

それからは姉も落ち着き、今も地元で二人目の旦那と姪っ子の3人で幸せそうに暮らしている。姪っ子も実の父親のことは知らず、新しい子供を作ることもなかったけれど、血縁なんて関係なく本人たちが幸せに暮らしていれば、それが家族のあるべき姿なのかもしれない。

小学生にもなると、ませた周りの子供達が恋だのなんだの騒ぎ始める。

「クラスの中で誰が好き?」なんて話題が出たり、色恋に興味津々なのである。そんな話題が自分に飛び火することもあったものの、まだまだ恋愛感情がどんなものか理解していない自分は、「好きな女の子」の設定を作って演じることで話を合わせていた。
好きな女の子に告白したり、バレンタインのチョコをもらえないかそわそわしたり、そんな恋愛ごっこをまだ純粋に楽しめていたように思う。

自我が芽生えてくるにつれ、周りの目を気にし始めるようにもなる。
僕が通っていた小学校では、「5年生になると何かの部活動に所属しなければいけない」という決まりがあり、希望していた文化系の部は抽選からはずれ、バレーボール部に所属することになってしまった。そして当時バレーボール部には、男子は自分以外誰もいなかったのである。
そんなことはまったく知らず偶然だったのに、周りの男子からは
「変態!」「エロ!」などとからかわれて、本当に辛かった。
後から思い返せば、「そんなしょうもないことで悩まなくても」と思えるけれども、当時の自分は本当に死にたいくらいに嫌だった。
そんな経験があったせいか、中学では吹奏楽部に入りたかったものの、男子が数名しかおらず、周りの目を気にして入れなかった。
音楽が好きな自分は、今でもそのことを後悔している。
人目を気にせず飛び込む勇気が、当時はどうしても持てなかったのだ。

自慰に目覚めたのは早かった方で、小学6年生の時だったと思う。なんとなく、陰茎を触っていると気持ちよくて、おしっこではない何かが出るということに自然と気づいた。とてもいけないことをしているんじゃないかと思って、はじめは周りには言えなかったけれど、中学生に入った頃には周りの友達も性の知識を身に着けはじめ、そんな話題になることも増えた。

河川敷に捨てられているエロ本を拾ってきたやつなんて、クラスのヒーローだった。エロ本に興奮している男子陣の中で、どうやら自分以外の友達は「女の人の裸」に興奮するらしい。でもなぜか自分は、女の人の裸を見ても何も感じず、男の裸ばかりに目が行ってドキドキしていた。兄の部屋にこっそり忍び込んでエロ本や同人誌を見たりしても、やはり男の裸ばかり探していた。

この頃から、自分は周りの友達とはどうやら違うようだと自覚するようになる。恋愛感情が芽生える前だったから、先天的な物だったのかもしれないし、家庭環境の影響もあったのかもしれない。でもまだこの頃は、「なんだか興奮する対象がみんなとは違うみたい。」といった「人には言えない、ちょっと恥ずかしい悩み」くらいだった。

それが本格的な悩みとなり、身を焼くような業火として燃え上がるのは、その後高校生になってからのことでした。






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