2023年夏の読書
この猛暑。頭の中が溶けそうでたまらない。それでも多少は読書をせないかんと思い、本屋に行く。古書店で縄文関係の本を数冊。熊本での古書店の数は少なく、僕の知る限りでは3店しかない。汽水社、舒文(じょぶん)堂 河島書店。天野書店の3社。みんな50メートル圏内にあるので、たまに街中に出向いた時に店を覗く。最近は河島さんから本をよく買った。郷土史、教育委員会の研究誌、博物館のイベント冊子など。意外や意外、縄文関係の掘り出し物が結構ある。古書店ではないが新刊は長崎書店。売れる本だけではなく、内容の濃い本がきちんと並べてある。石牟礼道子さんの本も充実。これは書店員の実力、知識、本への愛情の結果なのだ。(セルフレジの蔦屋とはレベルが違う)熊本の本の文化はこれらの本屋で支えられていると思う。僕の知らない書店には失礼する。
※県庁前の新刊・古書の混合店「シーン」と読む?店は開店か休店か分からないので行かない事にした (当方1時間かけて何度も行きましたがね…) 水俣の古書店(京都から移転)のカライモブックスは開店前に押しかけた (苦笑)
…と、言いながら買ったのが無印良品で都築響一氏の「圏外編集者」、紀伊国屋で又吉直樹の「東京百景」、アマゾンで森達也、鈴木邦男、斎藤貴男の「言論自滅列島」…全然、上通書店群では買っていない。しかもみんな文庫だし。
都築氏は自分の目で確認したことしか書かない筋金入りの独立した編集者。
食べログで店を検索するような人を一切信用しないと断言する。成功も失敗も、出会いも別れも一期一会、だから真剣で面白い記事が書けると言う。氏の編集した本はめくるたびに僕の知らない世界が広がる、何も予備知識のない世界でも、面白い物を見つける事が出来るのは、都築さんの修行の成果なのだろう。
又吉氏の東京百景は大阪から芸人を目指して東京に出て来て、貧しい暮らしながらも、自分の精神のバランスを取りながら、東京の市井で精一杯生きて来た彼の想い、思い出が書かれてある短編随筆集。僕も20歳の頃、何度も東京に出る夢を見た。だから今時珍しい、ボロアパートに住む又吉氏のような話は違和感がない。太宰治の文庫をズボンのポケットに入れ、辛い時は公園で読んだという彼のような若者が、今東京に何人居るのか。
森達也、鈴木邦男、斎藤貴男の「言論自滅列島」は森達也氏のNHKでのインタビューを見たのがきっかけ。1923年の9月1日に発生した東京大震災で、在日朝鮮人の虐殺事件、福田村事件を映画化した話を聞いたら、森氏の本を読んでみたくなった。以前、森氏は或る雑誌社から原稿を依頼され、書いた原稿が「偏った内容だから書き直せ」と言われた時、「個人の意見だから偏って当然」と言い返したそうだ。今後、僕もそうします。
本を買う情報源として、ラジオを聞いたり新聞を読んだり。以前はNHKの高橋源一郎さんのラジオもよく聞き、本を買う参考にしていた。高橋氏が熱意を込めて読みあげる作品はとても感動的で即、買わないかんと思うのだが、いざ買ってみると、そういわれるほど、僕にとってはいい本でなかった。別にキュレーターでも居るのか?番組も何だか仲間内で盛り上がるだけのグダグダ内容に変化したようで、面白くない。( 町田康は出なくてもよかった) 氏の番組にでると本も売れるだろうし、喜々として出て来る作家の話に食傷気味で最近聞くのを止めた。それに代わりよく聞いているのがTBSラジオの武田砂鉄さんの番組で、武田氏に紹介される本は内容が濃くて良い。
結果、都築さんのように、人のレビュー口コミなど気にせず、読みたい本を読めばいいし、又吉氏のように、ポケットに入れ公園の片隅で読む、自分を救う本と出合いたい。森氏のように、そんたく社会、押し付けられた意見にうなずかず、偏った意見を持ちたい。夏に読んだ本3冊が、ジャンルは全く違うのに、僕の溶解寸前の脳内で不思議と繋がったのだ。
迷える若者に対してマーケテイングして販売する本とか、最低だよな。サブカル 文化人 作家集団も気味が悪いぞ。
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