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ハラスメントについて考える

私は40代の女性である。子どもの頃、父から「女性は男性よりも劣る。脳みその容量から明らかである」と言われたことがある。強烈な反発心を感じたのを時折思い出す。当時のテレビでは、胸をはだけ(させられ)た女性が映るのは普通だった。ドラマでは、犯罪者に乱暴される女性のシーンも多く見られた。ゲームでお姫様を助ける主人公は決まって男の子だった。それが当たり前だった。


私は美術系の高校に進学した。美術・デザイン系を志望するクラスの9割は女子だった。指導する先生は全員男性だった。担任の先生は女性で、妊娠していた。数学の先生が、クラスみんなの前で妊娠した先生の膨らんだお腹を撫でた。女の先生がどんな表情をしたのかは覚えていない。


私は、幸いなことに美術系の大学に進学することが出来た。大学の教授は全員男性だった。おかしいとは思わなかった。女子学生に手を出すことで有名な先生がいた。大人の世界はそういうものだと思っていた。


社会人になって、夜中の1時頃までオフィスにいることがあたり前だった時代。夜中、同じようにオフィスに残った男性社員と二人きりになった時に不愉快なことを言われた。仕事人として働いていたのに、突然女性性であることをつきつけられたような気持になり、腹が立って気分が悪くなった。


当時はおかしいとも思わなかったことも、今は変だと思う。女性として嫌な思いをした根底には男尊女卑の思想や差別がある。これらは過去の歴史によって築き上げられた社会構造の問題だから、差別したり蔑視して良い理由にはならない。もちろん、女性性に限らずあらゆる全ての差別や蔑視は同じ理由であってはならない。しかし、無自覚に刷りこまれた差別思想はそう簡単には自己修正できるものではない。そもそも自分の中の差別に気づけない。

昨今、ハラスメントについてのニュースが世間を賑わす。私はそうしたニュースがとても気になる。人権侵害をする側にもされる側にも、誰でもなりうる可能性があるからだ。ハラスメントや人権侵害の問題は他人事ではない。人同士が寄り添って生きる社会では、誰もが関わる問題だ。

ここ数年、私をとりまく社会意識がアップデートされていると感じる。これまで弱い立場におかれた人々がSNSを通じて連携し、声をあげ、大きなうねりになっているのを感じるからだ。

以下に、私が記憶しているハラスメント事例を時系列に並べる。思いつく事例がここ数年の出来事であったことに改めて驚きを感じる。これらの大きな出来事を契機に、社会を構成する人々の意識を変わってきていると思いたいし、誰もが誰の目も気にせず、伸び伸びと生きていくことができる社会の実現を願ってやまない。


2015.12月 高橋まつりさん過労自殺

▶パワハラ問題、「女子力」セクハラ、ブラックな働き方の異常性が大きな社会問題となり、連日報道がなされていた。

2017.8月~「童貞。をプロデュース」出演者への性行為強要問題告発

▶2007年の公開作品映画をめぐる、出演者からのパワハラ告発事件。映画自体、公開当時から大きな話題となっていたので、私も見たいと思っていたが未見のままだった。ドキュメンタリーにおける取材対象者と取材者のパワーの非対称性が起こした事件とされる。2000年代以前より、サブカル界ではこうした一方的に取材をして作品化していくスタイルはあったと記憶している。現在、問題は第三者も絡まり泥沼化の様相。

【参考】松江哲明氏による謝罪と事件解説


2017.10月~ #MeToo運動 (セクハラを告発していく運動)がtwitterを中心として始まる。

▶日本でも、はあちゅう氏による岸勇希氏のセクハラ告発などが話題となった。【参考】岸氏による謝罪文

2018.4月 荒木経惟 氏による、モデル搾取問題 

▶ショックを受けた告発だった。荒木氏の写真に写る女性や女性たちの裸はモデルから合意を得たもので、かつモデル料が支払われているリーガルなものだと思っていたからだ。やりがい搾取のようなケースであった。

2020.4月 岡村隆史 オールナイトニッポン不適切発言

▶深夜放送内での発言が問題になったことに、それだけ社会の意識が変わったのかと感じた。一方で貧困者ビジネスを行っているとされる人物が大きな声をあげていた点に不審な目を向ける人もいたようだ。

2020.5月 幻冬舎・箕輪厚介 氏によるライターセクハラ問題

▶文春砲によって取り上げられた問題。明らかに関係の力が非対称な関係の中で起こった出来事だ。これに対する桃山商事による解説がわかりやすい。

2020.6月~ UPLINK 従業員が、代表・浅井隆 氏によるパワハラを告発

▶映画界が孕んでいる問題とも言われているが、先の箕輪問題における出版界、この後挙げるアート界でも同様にパワハラの温床があると言われている。これは、私が大学時代の教授陣が全員男性であったこととも関係しているのではないかとにらんでいる。つまり、ホモソーシャルな世界で起きやすい問題であるということだ。

2020.7月 カオスラ 黒瀬陽平 氏による従業員へのパワハラ

▶アート界におけるハラスメント事例。黒瀬本人に対し、周囲の者が何も言えないという力関係があったという点。ハラスメントを受けた被害者以外の従業員は、全員が男性だったという偏りある構成という点が、問題の根底にある。健全な社会を構成するには、会社などの組織体の性バランスを均等にする必要があるのではないだろうか。

【参考】被害者による告発文


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