出生数90万人割れのこと
日本の出生数が急減しているという報道がありました。過去最低を引き続き更新して、2019年には90万人を割る可能性が高いということです。
(日本経済新聞電子版より引用 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50672490W9A001C1MM8000/)
出生数の減少は予測されていたことで、驚くべきことではなく、年金財政の見込み等の将来推計が大きく変わるものではありません。
この現象について、経済政策や、雇用環境の非正規化(就職氷河期世代の問題)、格差の拡大といった問題によって婚姻率も下がり、子どもが産みずらくなっていることが原因だ。とするような論調が見受けられます。
しかし、そのような問題は無いわけではないけれども、目の前の出生数減少の原因は、日経記事にもあるように、「団塊ジュニア世代が40代後半になり、出産期の女性が減ったこと」が最大の原因です。
(出生数及び合計特殊出生率の年次推移)
内閣府 少子化社会対策白書(令和元年版)より引用
上表は出生数ですから男女全体ですし、その後の死亡は考慮されていませんが、10代後半から40代前半の出産期の女性の数が毎年減っていることの影響が大きいことが分かります。
合計特殊出生率はむしろ若干増加しているので、「子どもの産みずらさが増してきていることによって、出生数が減ってきている。」わけではありません。
雇用環境の問題についても、1.57だった1989年(平成元年)はバブル景気の最中で、正社員としての終身雇用、年功序列といった風習が強かった時期と言ってよいですが、その当時でも、合計特殊出生率は現在との比較で10%程度高い程度でした。
各年度の合計特殊出生率と出生数はおおむね比例関係になりますので、仮に2019年の合計特殊出生率がバブル経済期と同じ1.57とすると、約10%出生数が違いますので90万人が100万人程度に置き換わります。たしかに小さな影響ではありませんが、劇的なものではないでしょう。
自分も就職氷河期世代ど真ん中ですので、2005年に合計特殊出生率1.26を記録したというのは、たしかに当時は就職が決まらなかったり希望の職につけなかったりした人が(自分含め)多くいたもので低くなっているのは実感に適うものです。しかし、出産期の女性総数が現在よりも多かったので、出生数は現在よりは多かったというわけです。
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