金利平価説(その内容)
日本国債、マイナス利回りでも人気高まる-外国人買い倍増 (訂正)
7月の世界的な利回り低下で、マイナス利回りの日本国債の人気が高まった。日本証券業協会のデータによると、7月は外国人投資家による日本国債購入が2兆8800億円と、6月の1兆2800億円から2倍以上に増えた。購入の大きな部分は残存2-5年の債券だった。これらと通貨先渡契約を組み合わせて得られる米国債に対する上乗せ利回りは10年で最大に達している。
bloomberg より引用(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-21/PWKHWU6S972A01)
世界的に債券の利回りが低下したのでマイナス金利の日本国債が多く買われるようになった。という記事です。
ん?となるのが普通の感想ではないかと思います。
この現象について、何が起こっているのかを数回にわたって確かめていきますが、その準備として、まず、「金利平価説」を確認します。
■ 金利平価説とは
金利平価説(interest rate parity)は、2国間の金利差と先物為替レートと直物為替レートの差とが等しくなるという理論です。
たとえば、円と米ドルの現在の直物為替レート(スポット・レート)が105.00円/ドル、円の金利が0%、ドルの金利が2%とします。
日本円は金利0%なので105円を1年間保有しても1年後も105円です。一方、米ドルは金利2%なので1ドルを1年間保有すると1年度には1.02ドルになっています。
金利平価説は、1年後の先物為替レートは金利差を反映して、105.00/1.02=102.94円/ドルになる。と理論上の先物為替レートを決めるものです。
ここで、1年後の先物為替レートとは、「現在において、1年後に交換することを約束する為替レート」のことになります。為替予約や為替先渡と言われている取引も、内容としては同じと考えてかまいません。
■ 金利平価説の根拠
金利平価説が成り立つだろうと主張される根拠は、金利裁定取引にあります。
もし、金利平価説が成り立たない(=先物為替レートが金利平価説で決定されるレートと異なるものになる)とすると、金利平価説が決定するレートになるまで金利裁定取引が行われ続ける。というものです。
例として、1年後の為替レートが上表での102.94円/ドルではなくて104.00円/ドルだったと仮定します。
この仮定の状況では、円を円のまま持ち続けておくよりも、円を現在時点でドルに替えて(105円→1ドル)、同時に1年後104円/ドルの先物為替を締結することで、1年後に106.08円とすることができます。この取引は、無リスクとみなされるため、「やらないよりはやった方が絶対に得」であり、可能である限り実行される(可能であることを、「裁定機会がある」といいます)と考えられます。
そのため、金利平価説は実際の為替市場でも成り立つだろうと主張されたり、現実に成り立っているものとして紹介されている例も数多くあります。