関係性の質(3)イノベーションと関係性
関係性の質がイノベーション(新しい価値の創造)と大きな関わりを持つということを想像してみてください。
まず、関係性が良いと仕事の質が上がることを考えると品質の向上や部門間を越えた業務改革プロジェクトなどによいビジネスリレーションが大きく寄与することを理解できると思います。
また最近よく聞かれるアジャイルスクラムによる開発は、共通のゴールに到達するため、少人数の開発チームが一体となって働くという手法ですが、全員で成果を出しながら関係性をさらに向上させ、それがさらに成果に結びつくという一石二鳥の効果を持っています。一説によると変化が早く対応のスピードが求められるソフトウエア開発では従来の成功率3倍、失敗率3分の1とまで言われています。
しかし、今までに全くなかったような製品や革新的なビジネスを生み出すには、これだけで十分でしょうか?
既存のビジネスを破壊するような新事業の立ち上げや大規模な組織、設備を必要とするビジネスが大きな変化に対応するために社運をかけた意思決定を行う時、こうすればよいと想定できることはなく、普通なら非常識と思われるようなことを受け入れることが必要になります。
スマートフォンなどに欠かせないフラッシュメモリーの開発では東芝のエンジニアの異才同志が激しくぶつかり合い、その錬磨の中で不可能と考えられていた技術が生み出されていきました。
そこでは、口もきかない、顔も合わせないという“想いの衝突”があったにもかかわらず、なぜプロジェクトは空中分解しなかったのか?
トヨタのプリウスは当初全く採算が取れないと考えられていた中でどのようにして製品化にこぎつけられたのか?
iPhoneはスティーブ・ジョブズが開発したと言われるが、携わった数千人のアップル社員に厳しいチャレンジはなかったのか?
よく考えるとこういった疑問が出てきます。
大きなイノベーションも“個人の想い”から始まります。大きい想いは厳しい試練を受けますが、試練の中で前に進もうとする個人の姿に打たれ、徹底的に話し合って互いを受け入れ、理解していく内に仲間が増え、自分達の「どうしてもやりたい、どうしてもやらなければならない」という想いに育っていきます。それによって意見が違っていても共通の目的に向けて一貫したものにまとめ上げる自分達ができていき成果が現れて来ます。
このような共体験したメンバー同士はお互いの強いところも欠点もよくわかっていて、様々な困難を一丸となって乗り越えさらに大きなものを突き動かします。
このように関係性は大きなチャレンジの中でより強いものになっていくのです。
イノベーションを起こすということは、あたらしい価値を創りだすことに想いを向けた関係性の創造に挑戦することなのです。