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【小説】雄猫ぶーちょの生活 11 ぶーちょは空気を読む

ぶーちょの就寝時間は夜の9時だ。

それを決めたのは飼い主の私たちではない。もちろんぶーちょ本人でもない。縞尾である。

縞尾はぶーちょが来て以来、自由に猫ドアから出入りできなくなった。ぶーちょの脱走防止のため、昼間は猫ドアは閉まっている。縞尾は、不平不満を言わない。昼間は。
だが、夜になると、とりわけ9時が近くなると、じっと私の目を見る。無視すると、手を伸ばして私の頬をひっかく。

「早くぶーちょを寝かせて」

私はぶーちょを探す。ぶーちょは捕まえられないように、押入れの天袋に立てこもっている。ぶーちょは警戒して動かない。怖い目をしている。私はじっとぶーちょを見る。ぶーちょと呼んでみる。

5分くらい経過すると、ぶーちょはあきらめて、下に降りてくる。いかにも何気ない風で、水が飲みたくなったとか、トイレに行きたくなったとかを装う。

こうして、ぶーちょは空気を読み、今夜も無事に就寝時間を守れたのだ。

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