【小説】仔猫ぶーちょの生活-19 仔猫手当
お昼時になると、縞尾もぶーちょもそわそわしだす。縞尾は意味ありげに飼い主の顔を見上げる。ぶーちょは縞尾よりストレートに、「まだ?」と飼い主にまとわりつき、騒ぎ出す。
仔猫手当の時間だ。仔猫手当とは、ぶーちょがやってきたときに縞尾にあげ始めた、いわば「仔猫が来たせいで窮屈な思いをされるけれど、ごめんね、これで勘弁してね」という意味合いの猫缶手当だ。
ぶーちょが危ない外に出ないように、これまで二十四時間開いていた猫ドアは、ぶーちょが寝た後の夜だけ解放することにした。これまで、昼間でも夜中でも、いつでも自分の好きな時間に外出できた縞尾にとって、とんでもない窮屈な外出制限だ。猫ドアが閉まっている時に出るには、いちいち飼い主にガラス戸を開けてもらわなければならないのだ。
また、ぶーちょはまだ小さいので、猫との距離の取り方を全く知らず、縞尾を執拗に遊びに誘う。大人の猫は仔猫に絡まれるのを普通は嫌がるものだ。
その他もろもろの、ぶーちょが来たせいで縞尾の生活が乱されるのを償うつもりで、昼一回だけ猫缶を縞尾のあげることにしたのだ。縞尾はそれまでまれにしか猫缶をもらったことがないので、感激したようだ。
だが、ぶーちょも縞尾の猫缶を一緒に食べ始めた。仔猫手当の原因である仔猫も食べるのは変だが、一緒に生活しているので、仕方がない。
そして、この仔猫手当は拡張していく。
就寝時間になると、ぶーちょを捕まえ、男の飼い主の部屋に連れて行かなけらばならない。居間のドアを閉めてぶーちょが来ないようにしないと、縞尾のための猫ドアを解放できないからだ。
捕まえられるのを逃れるために、夜になるとぶーちょは飼い主の手が届かない押入れの最上段に立てこもるようになった。そこで、そこからぶーちょをおびき出すためにも、猫缶は使われる。
飼い主が猫缶の用意を始めると、いつの間にか押入れから降りてきたぶーちょが、縞尾と一緒に足元にいる。食べ終わると捕まえて、男の飼い主の部屋に連れて行き、一件落着となる。