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【小説】仔猫ぶーちょの生活-12 怒りの日

ある朝のこと、前夜、女の飼い主に十時頃にケージに入れられたぶーちょは、朝九時過ぎても飼い主の誰もケージを開けて出してくれないので、怒り狂っていた。ケージに置かれたドライフードの器、水の器をひっくり返し、怒りを表現した。

ぶーちょは陽気な猫である。だから感情の表現も陽気だ。昔、亭主関白の父親が怒りの表現にテーブルをひっくり返したが、ぶーちょも器をひっくり返して怒る。おかげでケージの一番下の床がびしょぬれになる大惨事になった。

ぶーちょをケージから解放し、ケージをきれいに拭き、新しいドライフードと水を置いても、ぶーちょの怒りは収まらない。部屋中走り回り、女の飼い主と縞尾にいつまでもしつこく絡んでくる。抱き上げようとすると、するりと鰻のように逃げてその勢いで足首にかみついてくる。

「謝ってみたら」という男の飼い主の提案で、「ぶーちょ、ごめんね。もう二度と長時間ケージに閉じ込めません」と言うと、こちらの言うことが分かったのか、おとなしくなった。その時はもう午後になっていた。ぶーちょは半日ずっと怒っていたのだ。

ぶーちょは人間の言葉を理解する賢い猫だが、しつこい猫でもあった。

この日以降、ぶーちょは男の飼い主を相手に、宵っ張り三昧の日を送っている。夕方も夜もたっぷり寝て、人間たちと縞尾が、さあ寝ようか、という頃にパッチリ目覚め、「さあ遊ぼうぜ」と男の飼い主に誘いをかけるのだ。


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