【小説】雄猫ぶーちょの生活 12 ケージはぶーちょのふるさと?
11月中旬、水道局のメータを見に来た人から、我が家のどこかで漏水しているようだ、と言われた。
さあ、大変。
早速水道工事会社に漏洩の調査と修理を依頼した。工事会社によると、室内に入っての調査、修理になるとのことだった。
ぶーちょをどうしよう?
縞尾は外に避難するから大丈夫だが、外に行けないぶーちょが工事のため開け離れたドアから脱走したら大変だ。
おまけにぶーちょは、幼いころ、夜になるとケージに閉じ込められたという嫌な思い出がある。成長してケージから解放されると、ケージを忌み嫌った。
調査はまる一日かかった。その間ぶーちょはやはりケージに入ることになった。ケージは大きなベッドカバーに覆われ、壁や床をはがしたり、ドリルで穴をあけたりと、調査で出る大きな音からぶーちょを守った。
でもぶーちょは意外におとなしかった。それどころか、いつもと違う部屋の様子を面白がっているようだった。カバーの隙間から、工事に来た人の作業をじっと見守り、時々ケージの柵の間から手を出してちょっかいを出そうとした。
それから1週間後、引きはがした床の修復工事が半日行われた。もうぶーちょは余裕だった。ケージの中から作業員の動作を目を輝かせて見ていた。
それ以来、ぶーちょはよく自分からケージの中に入るようになった。ケージから幼いころの嫌な思い出が消えて、自分を保護してくれたいいことだけが残ったのだろうか。