「斬る」(1962)

シベリアで捕虜生活を3年半送った三隅研次監督。若くして病死した市川雷蔵。柴田錬三郎の原作を新藤兼人が脚色した1962年の大映作品「斬る」は虚無的な作品。

お家騒動に巻き込まれ、好きな男(天知茂)の刀で幸せそうに断頭刑に処される母(藤村志保)。理不尽に殺される妹(渚まゆみ)。弟を逃がすために真っ裸になって追手に立ちふさがって死ぬ武家の娘(万里昌代)。これら女性の存在によって、主人公は生に執着しなくなったように思えます。だからといってアナーキーな生活を送るわけではなく、死を恐れずに、お目付け役の警護という役目を立派に果たそうとするのです。こんな作品が「黒の試走車」などとの二本立てで一週間から二週間おきに量産されていた時代。

2015年10月8日

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