キートンの短編映画
昨日の米アマゾンから購入した古本の件ですが、アマゾンからは何の返事もありませんでした。三日ほど返事がなければ、古本業者のほうにその旨連絡するつもりです。アマゾンとしては二ヵ月経過して返金した段階で取引が終わっていると考えているのかもしれません。私がアマゾンを介して本を購入したのは Hall Street Books という業者で、米アマゾンで月千冊ほど販売しており、顧客の99%が高く評価しています。アマゾンから何の連絡もなかったというメールであきらめるか、それともアマゾンを介さない別の支払方法を提示してくるか。その支払方法が安全なものであれば、喜んでお支払しますけど。
「キートンの一人百芸」の原題は "The Playhouse" で、旧邦題は「即席百人芸」。多重撮影を利用していて、寄席の芸人も裏方も観客もすべてキートンという最初の数分が有名です。1921年10月アメリカ公開で、それまで月1本ペースで公開されていたのに、前作から半年の開きがあるのは、多重撮影に苦労したためか。キートンはエルジン・レスリーを「人間メトロノーム」だと評して、この撮影技師の正確なテクニックを絶賛しています。当時はまだハンドルでフィルムを手回していて、何度も巻き戻して撮影したのでしょうが、一つの画面に最高9人のキートンが出てくるので、大変な作業だったのでしょう。
ただし、多重撮影のために画面が固定してしまい、ダイナミックさが失われ、舞台の正面からずっと眺めているような10年前の窮屈な映画に戻ったような感じがします。特撮にありがちな、技法には感心しても、内容はイマイチという感じです。顔を黒人風に塗った9人のキートンが出てくるシーンにしても、9人のキートンが横にずらっと並んでいる光景は少々異様ですが、いっせいに踊るというのならともかく、気の利いたジョークを一つか二つ言うだけで、ほとんど発展しません。それよりも、二人のキートンがタップダンスのような踊りをするシーンのほうが魅力的でした。これも二人の息がピッタリ合っているということより以前に、キートンの変なダンス自体が魅力的なのです。最初は指揮者と演奏者が全員キートンで、一つの画面に最大三人のキートンが登場しますが、サイレントだから楽器演奏が聞こえてこないわけだし、個々のヘマな演奏ぶりもさほど面白くありません。
あとは、おなじみのジョー・ロバーツとの劇場でのドタバタとなりますが、何の目的なしにとめどなく続くので、ほとんど印象に残りません。途中双子の娘が出てきますが、これは二重写しではないようです。一人はバージニア・フォックスで、もう一人は背格好が似た人でしょう。
キートンが観客の高貴な婦人に扮装すると桂歌丸さんが女装しているように見えます。また、猿の扮装をして猿の真似をする場面もあるのですが、キートンの高潔さが好きな私としては、こういう下品なのは見たくない。寄席出身のキートンの得意芸なのかもしれませんが。
これまで見た作品の採点表
「マイホーム」 ★★★★★
奇抜に作られた家が秀抜で、この中心がしっかりしているし、その前後も充実している。
「囚人13号」 ★★★★
とりとめもないが、ブラックなジョークがシュール。
「スケアクロウ」 ★★★
可愛いシーリーとの初々しい恋愛以外、普通に面白い。
「隣同志」 ★★★★
両脇にアパートがあって、真ん中に塀があるという中庭が良い。
「化物屋敷」 ★★
銀行の前半は接着剤のついた札束を使ったドタバタがくどいし、後半の化物屋敷のドタバタもありきたり。
「ハード・ラック」 ★★★
私が年取ったからなのか、枠組がしっかりしたものに安心するようで、とりとめもないものが苦手になってます。
「ハイ・サイン」 ★★★
キートンがアーバックルから独立して最初に作った短編。 キートンが気に入らなくてお蔵入りになっていたが、新作を撮影中に負傷したため、やむなく公開。
「強盗騒動」 ★★★★
ノンストップのチェイスもの。
「一人百役」 ★★
2011年4月20日
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