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本気の他人事~他人をサポートする仕事とは~

NPO法人あなたのいばしょ、理事の大空幸星さんは25歳。世界中に700名のスタッフを導入し、匿名無料で自殺防止のチャット支援を行っている。

そんなに毎日、死にたいというチャットに向かい合っていたら相談員自身が疲弊してしまいませんか?という質問に、「本気の他人事」というスタンスで、薄い膜をはって接することで自分を守っている、とのお返事。

わたしもセラピストとして長年、人の不調、特に身体に直接触れる仕事をしてきたのだが、いわゆる「もらってしまう」といって、クライアントの不調をもらって具合の悪くなることも多かった。一日に10人近く施術していたら、単純な肉体疲労もあるが、時には霊的に重いものを感じる時もあった。

先輩の鍼灸師さんやあんまさんに聞くと、終わった後の肘から手首にかけての流水での清めをしたほうがいいとか、神棚や清め塩は必ず毎日変えろとか、塩風呂を頭までつかれ、とかいろいろアドバイスいただいたり。

今言えることは、そっちの世界に持っていかれないように、やはり結界というか薄い膜は必要だし、本気の他人事とは大空さんよく言ったなと思う。
自分を失わないように、自分を守り、他人を想うことの難しさ。
(統合失調症の方など、たまに、自分と他人の距離感がわからなくなっちゃう人がいて、同一化してしまいます、症状です)

さて今日は、その他人事について、根深い想いがあることを共有したい。
親や家族や恋人という他人ではなく、利用者さんについて。
わたしは就労継続支援B型事業所でソーシャルワーカーをしていたのだが、
その時の想い、を毎日のように思い出しては考える。
個人情報を死守する必要があるので、名前はもちろん詳しいことは言いにくいが、簡単に言うと、「まだ救えたかもしれないのに手放して〈退所を余儀なくされた)しまった方々」について話す人がいないので書きたい、ということ。

ひとりの利用者さんは、その障害の重さや軽さ(障害等級)によって
使えるサービスが様々。また、知的障害、発達障害、に精神障害を併せ持っていると一人で暮らすのが難しいため、何人もの公的なサービスに介入してもらい、ようやっと日常生活が送れる。
家族や公的サービスの数が多く連携が取れているほど、開かれた支援
といえよう。
ところが、家族の中だけで閉鎖的に過ごされている方や、公的の機関とうまくいかない場合もある、閉ざされた支援である。

Oさんは40代女性。いままで閉ざされた支援の中で、知的障害、発達障害、統合失調症、パーソナル障害、の診断がつく。急に襲われるパニック発作では110番通報を繰り返し、そのたびに周囲の関係性は壊れていく。通報中は自傷行為もあり乖離している様子。投薬は統合失調症の軽いもののみ。
家族関係も複雑で、ひとり親の母は、人に迷惑をかけるからと外に出したがらない。
結局、「こちも毎日通報沙汰に巻き込まれたんじゃ迷惑だ」という理由で、退所を願った。
ここ、ここだ。
ここが納得いかずに、毎日このことを考える。
これだけの複雑なケースの場合、さらなる開かれた支援が必要で、様々な制度を使い、とくにマンパワーという人の内外の力が欲しいところ。まずは、精神科の先生に現状を話し、110番依存の治療も併せて進めて欲しいし、それは本人や家族が隠したいことならば、ソーシャルワーカーの出番であろう。この提案に順番や正解はないのだから、やれることはやってみよう、とわたしは提案したが、その時の周りのスタッフはみな逃げ腰で、迷惑しているの一点張りだった。。

当然である。スタッフといっても。みな専門家ではない。
出来事をはかる物差しが、専門の物差しではない。
一個人の意見として、迷惑だ、となる。

わたしは専門職なので引き下がらない、そうすると、わたしがOさんに
たいして依存している、関わりすぎだといわれる。専門じゃないスタッフから。

孤独だった。
本気の他人事に、取り組めないジレンマ。

最終的には、何も環境を変えられず、Oさんは母親に閉ざされながら
退所せざるをえなかった。完全に、こちらの力不足もあろう。
ここだ、ここを、なんとか出来なかったのかという悔いが今でも残る。
どこに、誰にアプローチすれば、変化の兆しがみれたのか。開かれた支援へ導けたのか、退所する必要はなかったのに。

わたしは、完全に未熟な受け入れ側の体制としか言えない。
もし、どうしても受け入れられなかったr、別の施設を紹介できるくらいの知識や知恵はなかったのか、と考える。
Oさんはまだ閉ざされているのだろうか。

本気の他人事の事例はたくさんあって、そのたびにすっきりしない
想いでいる。大空さんだったらどのようなアドヴァイスをくれるのだろうか。


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