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【企業分析】9101日本郵船/9104商船三井/9107川崎汽船/海運業界に学ぶ持分法会計
※ 本内容は2021/5/11時点の記事をWordPressからnoteに移行したものです
2021年、海運業界が好調です。
コンテナ不足に起因しコンテナ船運賃が高騰したため、日本郵船・商船三井・川崎汽船の海運3社の業績を押し上げていることは周知のとおりですが、3社のコンテナ船事業はすでに各社独自経営は行っておらず、3社で合弁化したうえで共同で運営(合弁会社として運営)しているようです。その結果、今回のコンテナ船事業好調による影響は3社の決算書上「持分法による投資利益」という勘定で営業外損益に計上されていました。しかも、その合弁会社がばかでかいために、3社の決算書上同じ巨額のインパクトを与えている点は面白いポイントです。
今回は海運業の決算書を見ながら、持分法会計とはどういう会計処理で、どういう点に留意が必要なのかをまとめてみます。
コンテナ船事業の合弁会社ONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)社とは
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ONE社は2017年に海運大手3社のコンテナ船事業を移管・統合した合弁会社で、日本郵船が38%、商船三井と川崎汽船がそれぞれ31%を出資し、各社はONE社持分法適用会社としています。
以下は川崎汽船の先日発表された2021年3月期決算短信からの抜粋です。
コンテナ船事業好調の影響でONE社の持分法利益を1,192億円計上したと記載されています。これはONE社の利益の全額ではなくあくまで31%分(川崎汽船持分)なので、同社は1年で約3,800億円を稼いだことになります(1,192÷31%)。利益金額が尋常じゃないですね、、ちなみに、先日発表された任天堂の2021年3月期の純利益が約4,800億円でしたのでその大きさが伺えます。
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持分法の仕組みに関しては次のセクションで解説します。
持分法会計とは、またその留意点とは
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持分法会計を簡単に仕訳と図に起こすとこんな感じです。
図の例では、合弁会社の資本金を10,000円で設立し、そのうちの31%の株を取得した(出資額は3,100円)。その合弁会社は1年後に1,000円の利益を稼ぎ、その後その全額を配当するということにします。単体決算とは合弁会社の株を持っている会社の単体決算で、単体決算では出資額は投資有価証券の科目で取得原価のまま計上されます。一方で連結決算では、持分法会計を適用し、合弁会社の利益計上に応じて投資有価証券の簿価を動かしていきます。
持分法会計を理解するうえで重要なポイントは2つあります。
ポイント1つ目は持分法会計の方が、単体決算より利益の計上のタイミングが早いという点です。持分法を適用すると投資先の損益がダイレクトに連結決算に反映されますが、単体決算上は配当の受領時にその金額を損益認識します(上の例では稼いだ利益を全額配当する前提)。投資の解消までのトータル期間で見たら同じですが、タイミングが異なるというのがポイントです。
ポイント2つ目は、配当を受領しないとCashとして還流してこない点です。もし合弁契約で配当についての意見を言えない状況だと、持分法上の利益は上がったとしてもそのリターンがいつまでたってもCashとして回収できないという事態が起こりえます。投資先の中で再投資をした方が成長できる面もありますが、配当も含めた出口は契約時点で意識したいですね。
さて、ONE社の合弁契約での配当の定めはどうなっているのか気になるところです。当期はONE社が超絶決算でしたが、その利益が来期に配当されるとなると、(持分法損益には影響はないものの)海運3社の営業キャッシュ・フローは大きくプラスになるはずです。
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海運3社の株価水準は(2021/5/11現在)
海運3社の株価はここ数カ月右肩上がりです。
今、過去のニュースを検索していると、コンテナ不足・海上運賃高騰は昨年の11月くらいからちらほらニュースになっていました。そして、私の仕事など身近でもコンテナ不足の話を聞くようになったのが今年1月か2月頭くらいでした。海運3社へはそこからInしていても十分に値幅がとれてますね。株価が上がりきった今はもう見ているだけですが、情報に敏感になれるかが大事だと改めて感じます。
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