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MonotaRO/ロングテール戦略も、実は在庫はそんなに多くないことが分かった/テクノロジーと物流で成長する
MonotaRO(モノタロウ)は工業用の間接資材のECサイトを運営する会社で、過去10年の売上高がきれいな放物線を描いて成長を遂げてきた会社として有名です(成長曲線は以下の画面ショット:2020/12期決算説明資料のP9を参照)。
そのMonotaROが先週2021/2/2に2020/12期の本決算を発表しましたので、決算発表の資料から同社の強みや今後のさらなる成長可能性について考察したいと思います。
2020年12月期 決算短信 (同社IR資料室より)
2020年12月期 決算説明資料 (同社IR資料室より)
MonotaROの経営戦略(Amazonと似てます)
同社の経営戦略に関しては有価証券報告書に記載されています(以下、2019年12月期有報より抜粋)。
これを読んだだけで、あぁイケてる会社やな、と思いました。
黄色のマーカー部分を要約すると、ロングテールという幅広い商品網で顧客をひっかけ(集客し)、注文データを使ったデータマーケティングで顧客の購入数を増やす。規模がスケールしてくるとPB商品で利益率を高めていく。商品ラインナップに加えて迅速に顧客に届ける物流網を整備し顧客満足を高める。この一連の流れはキレイです。
間接資材というアナログな世界にデジタルを持ち込み、そこでいち早くポジションを築いた。先行者でありポジションを築いたからこそロングテール戦略をとることができ、それが他社に対する模倣困難性(競争優位)を生み、さらに圧倒的な地位を築くことができた。ということだと思いました。
ん?どこかで聞いたことがある話だな。
はい。Amazonです。Amazonも書籍のEC通販から始り、ロングテール戦略による圧倒的な品揃えで顧客を増やし、翌日配送を可能にする圧倒的物流網をもち、本を書店に行かなくても買えるようになり消費者に利便性をもたらしました。物流とテックがキーである点も同じです。違いはtoC/toB、書籍/間接資材という市場規模くらいでしょうか。
MonotaROの在庫水準を確認
MonotaROの戦略の起点はロングテールな在庫点数です。売れないもの(売れ筋ではないもの)も揃えてる、ということで同社の在庫水準を財務諸表からも見てみたいと思います。
ちょっと意外でしたが、在庫は多くないです。
売上原価で算出した在庫回転期間で1.3カ月。同業他社と比べても多くないです。この会社は資金にも全く困ってません。
ロングテールといっても売れ筋の商品でない商品を多数抱えているわけではない(戦略的に少量抱える)ということだと思いました。
在庫は多ければいいというものではなく、しっかり在庫管理をしないといけないのですね。そこをはき違えてはいけない。
業績が好調なので、在庫がどんどんはけて品薄状態ということはあると思いますが。
株価水準と今後の展開
Amazonは書籍から通販全般に取り扱い商材を広げていきました。モノタロウは今後商材や広げ、またtoBからtoCにビジネスを広げていくことができるでしょうか。物流とテックという新たな武器の実装、それが見えたらもう一段上のステージに行くと思います(今のPERはそこまで織り込んでいるように思いますが、、)。
PS
決算説明資料はofficeの標準デザインを使うなど非常にもっさりしており、また文字と数字も多くこれまた威圧感を与えるものとなっています。
今風の決算説明資料ではないのですが、それが逆に、武骨というか、会社としての強さを際立たせていると感じました。
世の中的にはもう成長企業として十分周知されていることもあり(PERはとんでもなく高い)、IRは不要ということでこういうデザインになったんだと妙に納得してしまいました。
おわりに
この記事を書くにあたって、MonotaROはロングテールなので、在庫はかなり多いものと思ってました(仮説)。在庫が多い経営は一般的には不合理です。なので、不合理の中にあるMonotaROの強みを探る記事にしようと思ってましたが、その予想は裏切られました。意外にもキャッシュフロー経営に忠実でした、、
以下をネットから拾って来ましたが本編では使うところがなかったのが残念ですが載せておきます(『HUNTER×HUNTER』キメラアント編より)。