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【企業分析】7921宝&Co/宝印刷とプロネクサスの比較
※ 本内容は2022/9/11時点の記事をWordPressからnoteに移行したものです
経理の私もお世話になる上場企業のディスクロージャー支援企業は宝印刷とプロネクサスの2社寡占の業界です。2社寡占だけあって両社とも収益性は高く業績は安定しているため、いずれの会社に投資するのか迷うところです。会社の規模や株価評価もほぼ同ですが、両社の違いはどこかを調べたいと思います。
宝&Coとプロネクサスの株価指標と業績の比較
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PBRは宝&Coが若干高いです。PERが低い一方で、足元の収益性を示すROEが高く、PBRを押し上げています。とはいえ、企業の評価はほぼ同じと言っていいでしょう。ちなみに、プロネクサスは会計基準にIFRSを適用しており、日本基準を適用する宝&Coには計上されていないリース資産(使用権資産)とリース負債が計上されています。この分プロネクサスのROAとROICが若干低くなっている点には留意が必要です。
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PLをみると売上高はほぼ同じですが、利益率は宝&Coの方が若干高いです。ただし、本業(ディスクロージャー関連事業)の利益率・収益性の違いには後ほど触れます。
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プロネクサスの2021年3月期の減益は一部子会社の固定資産の減損損失の影響が大きかったこと、人的投資・コロナ対策・DX投資等のコスト増要因があったとのことの2点があげられます。減損3.5億円が営業利益に計上されていますが、この特殊要因がなかったとしても前年同期ほぼ横ばい・微減益です。
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前述のとおり、ROEは宝&Coの方が良く、そして、ROEは改善傾向にあります。毎期利益を計上し資本が積みあがっていくなかROEの水準を維持している点は宝&Coの方が好感が持てます。
宝&Coとプロネクサスの事業の違い
下表は両社の取り扱い製品の違いを表すものですが、有価証券報告書等から作成しています。ディスクロージャー関連事業に関しては、製品区分の切り口が異なるものの両社ほぼ同じです。両社の違いは宝&Coの通訳・翻訳事業です。こちら、近年買収した2社(十印とサイマル・インターナショナル社)が行う事業で、ディスクロージャー関連の英文翻訳とは直接的には関係ない事業です。もちろん買収の目的は2社の翻訳・通訳のノウハウをディスクロージャー事業に活かすことではありますが、英文開示含む外国語のディスクロージャー関連の事業がそれほど伸びるか?には疑問もあり、基本従前の通訳・翻訳事業が2社の基盤事業となるのではないかと思います。
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また、この通訳・翻訳事業の利益率が低い点が気になります。通訳・翻訳という事業は競合も多そうで、差別化が難しためではないかと想像します。一方で、宝のディスクロージャー関連事業の利益率の高さはプロネクサスに比べ圧倒的に高いこともわかります。
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単一事業のプロネクサスと、収益性の異なる2つの事業を持つ宝&Coですが、この2社の事業の違いをどう見るかで評価が分かれそうで、私個人としては宝Coの方が好みです。通訳・翻訳事業の収益性の低さ、多額ののれん等の無形資産の減損リスクを抱えることを嫌だと思う人もいるでしょう。一方で本業のディスクロージャー関連事業はプロネクサスより収益性が高い点が評価される点と、通訳・翻訳事業も改善しろがある点では株価上昇の期待も持てます。
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過去のPER推移をみると、基本的にはプロネクサスの方が評価されていることがわかります。宝&Coが異なる複数の事業を行い、通訳・翻訳事業の収益性の低さを嫌気しており、一方プロネクサスは単一事業にリソースを集中している点が評価されているのかしれません。