父母の離婚後の子の養育に関する海外法制について ③ 子がいる場合の協議離婚の可否
父母の離婚後の親権制度や子の養育の在り方について、法務省が外務省に依頼して行っていた海外法制調査の取りまとめ結果と、結果の概要が先日公表されました。
これは法務省が、離婚後の親権制度や子の養育の在り方について、外務省に依頼してG20を含む海外24か国の法制 度や運用状況の基本的調査を行ったものとなります。
法務省の資料は国ごとにまとめられていますが、項目ごとに各国を比較したいと思いnoteに纏めました。
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③ 子がいる場合の協議離婚の可否
【北米】
第1 アメリカ(ニューヨーク州)
子の有無にかかわらず、争いのない離婚の場合でも書類を裁判所に提出し、裁判所の確認を受けた上で、離婚が認められることになる。
第2 アメリカ(ワシントンDC)
認められている(裁判所に申請する必要はあるが、当事者間で争いがない 場合には、申請がそのまま認められ、裁判所の実質的な関与はない。)。
第3 カナダ(ケベック州)
子の有無にかかわらず、協議離婚は認められていない。
第4 カナダ(ブリティッシュコロンビア州)
子の有無にかかわらず、協議離婚は認められておらず、裁判所の決定が必要である。もっとも夫婦が、親権行使の方法、扶養料、財産分与等について合意に達している場合は、当事者は裁判所に出頭する必要はなく、裁判官が書面を確認することにより離婚が認められる。
【中南米】
第1 アルゼンチン
子の有無にかかわらず、協議離婚は認められていない。
第2 ブラジル
協議離婚は、未成年の子(又は無能力の子)がいない場合にのみ認められている(民事訴訟法第1124-A条)。
第3 メキシコ
子がいる夫婦の場合には、裁判手続を経ずに協議離婚をすることはできない(メキシコ連邦民法第273条)。子がいる夫婦は、裁判所に離婚の申請を行い、子の養育を行う者、養育費の支払方法、父母それぞれの居住地、未成年の子に対して支払われる食費の金額、離婚手続期間における夫婦の 財産管理方法について合意しなければならない。
【アジア】
第1 インド
子がいる場合にも協議離婚が認められている(判例)。
第2 インドネシア
インドネシアでは、双方の同意に基づく離婚は認められておらず、全ての離婚に関する問題は裁判所によって決定される。
第3 韓国
子がいる場合も、協議離婚は認められている(上記1参照)。ただし、協議離婚についても、裁判所が夫婦の離婚意思の確認をしている。すなわち、協議離婚においても、離婚意思確認申請と同時又は離婚意思確認期日※13 までに子の養育に関する事項(養育者,養育費,面会交流に関する 事項。以上民法第837条第1項,第2項)及び親権者決定に関する協議事 項を家庭裁判所に提出しなければならない(同法第836条の2第4項)。
※通常は、家庭裁判所に離婚意思の確認を申請して離婚に関する案内を受けた日から1か 月経過後であるが、養育すべき子がいる場合には3か月になる。
第4 タイ
子がいる場合も、協議離婚は認められている。
第5 中国
認められる。
第6 フィリピン
認められていない。キリスト教の影響から離婚制度が存在せず、婚姻関係を解消する制度(Annulment of marriage)しかないが、同制度には必ず裁判所が関与する。
【欧州】
第1 イタリア
2014年11月10日の法律により、「支援付きの交渉」の手続が導入された。子の有無にかかわらず、別居や離婚の条件についての合意やその条件の変更の合意を行うために、同手続を利用することができる。双方の弁護士が管理をすることで、交渉が行われる。
第2 イギリス(イングランド及びウェールズ)
未成年の子の有無にかかわらず、協議離婚は認められず、裁判所の決定が必要である(1973年婚姻事件法第1条)。
第3 オランダ
未成年の子の有無にかかわらず、当事者の合意のみの協議離婚は認められず、離婚は常に裁判所においてされる。離婚時に子がいる場合には、離婚請求は、養育計画(parental plan)の提出と共にされなければならない。
第4 スイス
・ 未成年の子の有無にかかわらず、協議離婚は認められておらず、裁判手続が必要である。夫婦が合意に基づいて離婚を望む場合も、裁判所の承認が必要であり、裁判所は、当該合意が自由意思に基づき、熟考及び子の扱いに関する合意を経て承認可能となることを説諭する必要がある(民法 第111条)。
第5 スウェーデン
いかなる場合も協議離婚は認められておらず、裁判手続が必要である。
第6 スペイン
我が国のような協議離婚は認められず、裁判所が関与し、夫婦間の離婚協定を裁判官が承認するという形で離婚が認められる。当該手続は未成年の子がいる場合にも認められる。
第7 ドイツ
子の有無にかかわらず、離婚は夫婦の一方又は双方からの申立てに基づ く裁判所の決定によってのみ行われる(民法典第1564条)。
第8 フランス
未成年の子がいても、一定の要件を満たせば協議離婚が認められる。 2015年の法律により、協議離婚(相互同意離婚)が広く認められることになった。両親は、裁判官による聴聞を受ける権利について通知を受けていた子が当該聴聞を求めた場合を除き、協議離婚を行うことができる(民法 典第229条,第229-2条第1号,第388-1条)。なお、協議離婚 といっても、裁判所が関与しないということであり、弁護士の連署又は公証人による原本証明を経た私署証書による必要があり、法律の専門家の関与はある。
第9 ロシア
未成年の子がいる場合は、協議離婚は認められず、離婚は裁判手続で行われる(家族法典第21条)。 離婚裁判において、親権に関する取決めも調整・決定されるが、大多数の 事案においては、事前に夫婦間で協議・合意の上、書面での取決めが行われている。仮に親権に関する紛争が離婚裁判で解決されない場合には、後見・ 保佐機関の関与も得て、子の利益に係る個別的な裁判手続が行われる。
【オセアニア】
オーストラリア
子の有無にかかわらず、当事者の合意のみで行われる協議離婚は認められず、裁判所による命令が必要である。ただし、夫婦が共同して離婚を申し立てるのであれば、夫婦がいずれも裁判所に出頭しなくても、裁判所は、離婚の命令を下すことができる。
【中東・アフリカ】
第1 サウジアラビア
子の有無にかかわらず協離婚をすることは認められている。その際に、親権行使の態様について合意することもできる。
第2 トルコ
子の有無にかかわらず、協議離婚は認められていない。
第3 南アフリカ
記載なし