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短編小説 「春の誘い」

春から大学に進学する紗倉 葵(さくら あおい)は姉の翠(みどり)が通っていた看護専門学校の校門前にいた。

「春からここ……か。」

私は期待と不安を胸に抱きながら桜の校門前に立っていた。今日は姉のみどりが卒業式だからだ。姉を追って、父の死を背に受けて春から入学。少し早い桜が咲いていた。

「あおい、中入ろうか。」

私は母に背を押され少し不安の足音を鳴らして歩いた。

「お母さんはここ入る時どんな感じだったの?」

「私は結構ワクワクしてたよ。みどりも入学の時は楽しみにしてたみたい」

そう聞いた時、お姉ちゃんは特に不安もなかったと思うと私はもっと不安な音色を響かせた。
----姉の卒業式は無事に終わり主席で卒業----

「お姉ちゃん卒業おめでとう」
「みどり、よく頑張ったね」

そう言ってなかなかない3人1緒に帰路に着いた。
私は帰るやいなや、自分の部屋で自分自身を見つめていた。そんな時だった。どこからが声が聞こえた気がした。

「はぁ、考えすぎちゃったかな」

そう呟いてベッドに横になってぼーっとしていた。気のせいじゃないと気づいたのはその瞬間だった。

「あおい。お父さんはみどりや母さんの幸せを祈っている。お父さんのことで背にいっぱいにするんじゃない。みどりや母さん、そしてたくさんの人の心を幸せにするんだ。お父さんのことは気にしなくていい。父さんはあおいができるって信じているよ。」

私はハッと我に返り、周りを見渡した。お父さんの声はもう聞こえなかった。その代わりとでも言うように桜の花びらが勉強机に散っていた。どこからだろうと窓を見ると自分の家の桜が満開になっていた。窓は開いていたようだった。

「お父さん。私、お父さんだけじゃなくてこの世界の困っている人達を救いたい。だから自信持つよ。」

私は窓から見る桜に向かって呟いた。もしかしたら桜のどこかにお父さんがいるかもしれない。これは春からの誘いなんだと思って部屋を出た。

4月。入学式に向かう私の足取りはかなり軽く明るい音色を放っていた。

「お父さん、行ってきます」

お父さんに背中を押されるように未来へと大きな一歩を踏み出した。


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3月と4月は別れと出会いの季節。卒業生の皆さんはご卒業おめでとうございます。進級進学の皆さんはこれから新しい1歩を踏み出していきましょう。これは私からの春のプレゼントです。

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