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宇宙のロマン、それは時間依存シュレディンガー方程式(その5)

その4で思わせぶりな締めくくり方をしたので、今回はそこから盛り上げていかないといけないのかと思うと、そういう思わせぶりな締めくくり方をして遁走した昨日の自分を恨みたくならないでもないです。

愚痴っても始まらないので始めるよ。ここ、時間微分です。一階微分。

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一方、右辺のほうでは、二階の微分です。二階の位置微分。

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時間($${t}$$)微分は一階で、位置($${x}$$)微分は二階になるのは、どうしてなのかと訊かれて、さっと答えられるかどうか、私も少々自信がないので、少しばかり考えてみると…

$${∂^2/∂x^2}$$ は位置の二階微分… 古典力学にそって考えると加速度っぽいなーと思った方は多いか少ないか分かりませんがその理解でいいです――古典力学であれば。


運動エネルギーの項目

この項目全体が、電子の運動エネルギーを表しています。

”$${m}$$ つまり質量があるのだから電子の質量だろうな、$${ℏ}$$ はエネルギーという貨幣の最小単位(日本でいう円)にあたるという話だし、ここの $${∂^2/∂x^2}$$ は位置の二階微分だから電子の加速度がらみかな” などと物理的想像を膨らませる向きもきっと多いことと思います —— 私ぐらいですかそうですか。


小学校の理科っ子が語るよ

私は高校物理は独習で済ませました。化学も途中からそうです。生物の授業はつまんなかったです。(地学? 左京文学でお腹いっぱい)

高校物理は最後までわかったようでわからない感が残りました。"運動エネルギー $${E}$$ について速度 $${v}$$ で語れるのはわかる。一方、速度 $${v}$$ について加速度 $${a}$$ で語れる。ということは運動エネルギーについて加速度 $${a}$$ で語ってもいいってことなんやろか…" みたいなモヤモヤ疑問を引きずりました。

東大理Ⅲ合格者へのインタビュー本を読んだとき、何人かの方(全員男性)が「力学って要は $${F=ma}$$ さえあればほかの公式は微積で導出できちゃうんだって理解できたときは感動だったな~」とさわやかに語っていたのがお兄さんたち賢そうさわやかで、ああそういうものなのか $${F=ma}$$ がニュートン力学の真髄なのかそれはすばらしい私もそういうの学んでおかないといけないわとその筋の参考書を手に入れてコツコツ読み込んでいった、ガラスの十代をいっとき過ごしたような記憶が、消えゆく時の地平線の向こう側の、薄っすらと白くただよう霧のどこかに、もしかしたらあるような気もしています。


さよなら駿台物理

一方で、自分が十代でなくなるにつれて、考えが変わっていきました。

ニュートン力学(ニュートンが書き残した超難解な力学書を、後世の英才たちが少しずつ解析化してマニュアル化したもの)においてはなるほど $${F=ma}$$ すなわち力と加速度が王様しているけれど…

ラグランジュ力学(ラグランジュが書き記した力学の体系書を後世の俊才たちが整理してこの名で尊称したもの)ではこの数式は、主役を張っていないし…

さらに後になってハミルトン力学(ハミルトンが書き記した論文を[以下略])が体系化されると、力も加速度ではなく、エネルギーと運動量のペアのほうが主役っぽくなっていました。

こうした一連の脱・ニュートンな流れ、まっとうな理由があると、かなり後になって知りました。

力とか加速度とか、よく考えたらとても抽象的なものですよね。とりわけ力って何なのか? 私たちが「あいつは力持ちだ」とか言うときの力は、仕事率($${W/⊿t}$$)のことです多くの場合。

力学でいう「力」は運動量とかのもっと具体的かつ体感的なものから抽出される、非常に抽象的で、つかみどころのない概念なので、ラグランジュ先生をはじめいろいろな俊英たちは何とか「力」に軸足を置かないで成り立つような力学体系を作れないかと頑張っていて、それが時期的にはフランス革命の頃に実現したのです。

さらに19世紀前半になってアイルランドの神童あがりハミルトンの、途中で投げ出してしまった力学研究を皮切りに、エネルギーを主役に、運動量を準主役に置いた力学・ハミルトン力学がぐんぐん成長して・・・

これが20世紀に入って、量子力学の石垣になると、イングランドのディラックが気づきました。

「おひさ~」


どうなったか? ニュートン力学の主役 $${F=ma}$$ が、量子力学から消えうせたのです。

力($${F}$$)も加速度($${a}$$)もいらない、頼らない。代わりにエネルギー最小単位($${ℏ}$$)と…

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加速度に代わって、位置の二階微分 $${∂^2/∂x^2}$$ こそが、コーラスラインに入るねん、と。

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青春です、青春のビートを感じます。[棒読み]


つづく


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