「おはよう。いってらっしゃい。おはよう。いってらっしゃい」
少し熱いとさえ感じるようになった、GW明けの朝のこと。
私は今日も防犯ボランティアの当番として、子供たちの登校を見守っていた。
「はーい。みんな手ぇ挙げてな。休み明けやけど、元気出していこ!」
横断歩道の右端に立ち、防犯用の黄色い旗をかざす。
子供たちの少しだけだるそうなあいさつに微笑み返していると、
青年が乗る赤い自転車が、スマホ片手にフラフラと横断しているのが見えた。
「ちょっとあんた!!またスマホ持って運転してるやないですか!!
なんかあってからやったら遅いってことがわからへんのですか!?」
「あー、悪かった悪かった」
「通勤中も仕事て言うやないですか!!会社に安全に向かうのも立派な仕事のうちなんですよ!?」
「あー、仕事してへんから。関係ない関係ない」
「え?じゃああなた、こんな朝からふらふらしてるんですか!?」
「ふらふらやない。パチいくねんパチ。俺パチプロやから。台選ぶためにはよいかなあかんねん」
「あんた、そんなんで食べていけるわけないやないですか!まだ若いねんし、まっとうに働いたらどうですか!?」
「そのうちな。そのうち。親死んだら働くから。な?」
「あんた、、、、、、ちゃんと将来のこと考えたほうがええで!」
「わかったわかった、じゃあな、おせっかいありがと」
青年は虫を追い払うような怪訝な態度であしらってきた。
「ちょ、まだ話は終わってなーーー」
「信号変わるぞ!」
「ほんまや!」
彼の自転車を追いかけるように、横断歩道を駆け抜けていった。