ブロッコリー

お笑いライブ初めをした帰りだった。
帰りの電車。座ると丁度向かいの席。
座席の下にブロッコリー。
袋に入っている。ぽつんと。
向かいの席の男性のもの……
そんなバカな。変すぎるだろ。
でも変な人ってこういう事をするものだし。
真上の荷物棚に大きいリュックがある。
やっぱり誰かの忘れ物なのかもしれない。
ブロッコリーがあるだけで変な空間に入ったようでニヤニヤしてしまう。

数駅先で向かいの男性は荷物棚のリュックを背負って降りていった。

私は「すいません、ブロッコリー忘れてますよ。」という声かけができる性格じゃなかった。降りるまでそのブロッコリーを持つことになるのが想像できた。ブロッコリーにしか見えないけど、もしも、不審物だった場合、むやみに持つのは危険だ。不審物扱いをして電車が止まり、帰りの時間が闇雲に遅くなるのも嫌だった。
私はそのブロッコリーを見て見ぬふりすることにした。よくやってしまうが、触らぬ神に祟りなし。ブロッコリーの不審物事件もなかったようだしやっぱりただのブロッコリーだったんだなと今なら確信が持てる。
もうちょっと不用心に生きたい。