その一挙手一投足は観る者を魅了するためにある。そして篠原演芸場へ。
緊張と緩和、期待と(巧みな)裏切り
色を覚える、というか、自分でも気がつかないほど自然に「あの人が見たい」と期待する。欲望する。
次の瞬間、舞台上に現れたのがこちらの花魁だったのでした。
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十条・篠原演芸場へ
「先達はあらまほしき事なり」と書いたのは兼好法師でしたが、まさにそんな形で先に浅草の木馬館へ足を運んでから一月とあかず、「あっ」という間も無く篠原演芸場へ足を運ぶことができたのでした。
朝陽政次さん率いる劇団鯱さん。
2月下旬のことでした。
「おそらく今回のお芝居は血糊を使ったりするので、ショーが先でお芝居が後になると思う」と教えてくれるその先達の方に連れられて、日本屈指ともいわれる十条の商店街を歩いていくとライトな『千と千尋』にでも出てきそうなお惣菜屋さんが現れ、そこで”鴨わさ”なるめっちゃ美味しいものなどをたくさん買い込んで路地を抜け、向かった先には篠原演芸場がありました。
「昭和がそのまま残ってるのよね」と、また別の人から教えてもらったこのまち十条は確かに趣というか面構えが、普段生活している東京の西側とはまったく異なるのでした。
篠原演芸場のおにぎり
さて、先日の木馬館でまだあまり訳もわからず見ていたお芝居の中で、たしかに役者さんが「篠原へ出かけたらにぎりめしも食べたいしだな…」と言っていたのを覚えていました。
そう、日本一とも言われる篠原演芸場のおにぎりです。
参考になるブログ記事はこちら!
https://spice.eplus.jp/articles/24282
先の商店街のお惣菜やさんでおにく(タンパク質)の類はたくさん買ってありましたから、ここでおにぎり(炭水化物)を手に入れれば、栄養バランスとしては理想的だと言えます。(?)
重ね重ねその先達の方より開演前にいろんなお話を聞きつつ、幕が開いてからそっと齧ったそのおにぎりは噂にたがわずめちゃくちゃ美味しく、一口かじるごとに「うまい、うまいぞ!!!」と、かえってお腹が空いていくような心持ちになり、結局後の休憩時にもう一個買い足し、都合四個のおにぎりを食べました。(明太子、鶏の釜飯、高菜、昆布)
ショーの序盤ではおにぎりと、コロッケを交互にかじっていましたが本当に美味しかったです。あったかいのは言わずもがな、米がうまい。米が!!
アルミホイルに包まれた百四十円のおにぎりは具もたっぷりでふっくら握られていて、ほんとうにおいしい。
ひとしきりおにぎりをぱくついたあと、遠慮がちにいろいろと写真を撮ってみたものの、己の腕の足りなさに悲しくなったので写真を撮る練習を重ねたいと思います。
(舞台写真撮るのはものすごく難しいんですね…!)
舞台写真
上演を見ている最中というのは、個人的には己の生活の中で一番エネルギッシュ(精神的に)な時間で、自分の中の心が様々なことを考える時間であります。
上演を見ている最中に「かっこいいな」とか「綺麗だな」とか、そういうシンプルな感情でいっぱいになっていく中で、ショーが終盤に近づくに連れて感じていたのは、ショーの序盤で現れた「あの綺麗な人(獅子丸さん)が早く見たい」ということでした。
ショーの序盤(二番手)で踊りを披露していた獅子丸さんは中盤以降出番が少なく、フィナーレへ向けて準備をしているようでした。
序盤、おにぎりにかまけてしまったがためにカメラを構えられず、一枚も写真に撮れなかったのを上演中に悔やむくらいには、「綺麗だったな、、」と、獅子丸さんの姿に深く印象を受けていたのでした。
期待は、そして爆笑に変わる
そんなこんなでずっと待ち続け、照明もガンガン回り、「そろそろかな」「きたきたきたきた!」(語彙力)という時間を経て現れたのが、冒頭でも出てきたこちらの花魁なのでした。
場内は大爆笑、老いも若きもその一挙手一投足に客席が沸き、個人的には「結構いいふくらはぎをしているな」と、着物の衣装では見られない、舞台上で様々な姿勢を保持する役者さんのカーフ(ふくらはぎ部分)の発達に目を奪われていました。(?)
十条の商店街へと向かう道すがら、連れて行ってくれた先達の方より
「大衆演劇って、ほらものすごくエモーショナルに舞台と客席で感情の交流があるでしょう。だからもしかしたら〇〇先生(日本演劇の先生)にとっては、ちょっとどぎつい感じに思えてしまうのかもしれないねぇ。観て欲しいのだけど。」
という、なんだかそんなお話を聞いていたのでしたが、たしかに思わず性別なんか忘れて色を覚えるほどに、うっとり魅了されてしまう力が、舞台に立つ役者さんの一挙手一投足にはあるのでした。
『河内十人斬り』のお芝居の方も、親子のクマとゴロウの主軸二人は言わずもがな、女性と子供の役の造形が面白く、大いに場内を笑わせ、そしてきちんと泣かせる上演でこちらも見事でした。(お芝居の方は写真がなく…!)
(『河内十人斬り』などの作品の、劇団ごとの翻案、脚色、アダプテーションの派生といったお話が、とても興味深かったのですが、長くなりすぎますので別の機会に改めたいと思います。)
***
天国、それってもしかして、センター?
さてその先達の方のおかげで、「わけもわからず石清水八幡宮の手前で引き返してくる」といったことにならずにすみ、”鴨わさ”も堪能し、『河内10人斬り』の様々な異本の話や、関東地方の様々な大衆劇団の特色といった話をモリモリで伺うことができました。
そしてどうやら、大衆演劇には”天国”と呼ばれる、「温泉×食事×芝居」という、「温泉センター」なるなんだかすごい施設があるらしいこと、そしていま絶対に見逃してはならない、ゆうちゃんと呼ばれる若くてすごい女優さんがいるらしい、ということをまた心に留めおくこととなりました。
書きたいことがたくさん、思ったことやその後も考えた感想がはちきれんばかりにありますが、とにかくこれだけ言わせてください、
「また行きます!」
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