起業家マインドを考える『エフェクチュエーション』
起業支援に取り組む中小企業診断士の集まり『スタラボ』
今月の座談会は、企業の要職で働きながらも、中小企業診断士やライターとして多方面で活躍されている中郡久雄さまにご登壇いただきました。
テーマは「起業家の思考&行動様式『エフェクチュエーション』基本編」
「エフェクチュエーション」
「起業家の新しい意思決定の思考法」と聞いたときから、いつか詳しく学びたいと思いながら、翻訳本の分厚さと6,000円という金額にビビって尻込み。。今回、中郡さんのテーマをお聞きし「ついにチャンスがきた!」と楽しみにしていました。
中郡さんは、本書の翻訳者の一人である吉田満梨先生のセミナーにも参加され、実際の中小企業の支援の現場でも、その理論や考え方を実践されています。
今回は、限られた時間ながらも、起業家の思考&行動様式の基本編としてご紹介いただきました。
以下、中郡さんの座談会の概要です。
(掲載許可をいただいています)
エフェクチュエーションとは
エフェクチュエーションとは「エキスパートの起業家から発見された、極めて高い不確実性に対処する思考様式」と言われている。
この思考は「あの人だからできた」というものではなく、どのような特性を持つ人でも、学習できるのが特徴。
自分はこれまで「経営理念や経営戦略が大切」と話してきたが、エフェクチュエーションの考えとは違うところもある。
「従来の考えやアプローチが良くない」というものではなく、状況に応じて、2つの考えやアプローチが使えればよいと思う。
コーゼーションとエフェクチュエーションの違い
従来の考えとは、目的に対して最適な手段を追求する「因果性」を重視するアプローチ。(コーゼーション(Causation))
目的が明確で、環境が予測可能であれば「有効」と言われるが、実際には予測が外れることも多い。逆に予測できるようなものは「レッドオーシャン」になっていて、うまくいかない。
一方、エフェクチュエーションの考えでは、「目的」よりもまずは手持ちの「手段・リソース」を重視する。自分の持っている複数の手段・リソースをベースにして「目的」を新たに描いていくイメージ。
目的が明確に見えてなくても、自分の手持ちのリソースを使って、新しいものがつくれる、ということ。コントロール可能な活動に集中して、可能性をつくりだしていくアプローチといえる。
エフェクチュエーションの5つの原理
「エフェクチュエーション」のプロセスを構成する5つの原理を紹介する。(もとが英語なので、ちょっとわかりにくい表現もある)
①手中の鳥
目的ではなく、自分の持っている手持ちの手段に基づいて、新しいことを考える。「自分がだれか」「何を知っているか」「誰を知っているか」の問いに答え、自分の手持ちの手段を知ることが大事。
②許容可能な損失
自分の中で、失敗しても許せる損失を考える。
想定される損失をあらかじめ考えておくことで、実行がしやすくなる。
③レモネード
予期せぬことも、見方などを変えることで、新しい考えが生まれる。
よく言われる例だが、コップに水が「半分も入っている」とみるか、「半分しか入っていない」とみるか、で考え方も変わる。
④クレイジーキルト
パズルのような完成図が決まっているわけではなく、不規則な布を縫い合わせて、カタチをつくっていくイメージ。組織でいえば、パートナーシップをもって、柔軟に組み合わせて進めること。
⑤飛行機のパイロット
不確実で、刻々と変化する状況に応じて、臨機応変に対応する。未来は予測不可能なので、コントロールできるもので未来をつくりだす。
これらのサイクルをまわすことで、想像しなかったような新しい可能性が生まれる。
従来の「目的」を重視するアプローチは、環境が予測できれば成り立つが、実際には予測は、外れることが多い。そう思うと、エフェクチュエーションのアプローチは、実用的な考えと言えるのではないか。
この考えは、起業だけでなく、新規事業の立ち上げなどにも応用可能。今回は、エフェクチュエーションのさわりの部分だったが、興味を持った方は、ぜひエフェクチュエーションの学びを深めてほしい。
最後に
「予測は外れるもの」
その前提に立てば、従来型の「目的を明確にして、環境を分析し、計画を立て、実行する」というアプローチは確かに限界を感じます。
実際に自分も、新しい事業に携わったときに、その難しさをイタイほど感じました。
今回、中郡さんにご紹介いただいた「エフェクチュエーション」のマインドやアプローチは、確かに起業家の意思決定だけでなく、新しいことを考えるときに、誰もが実践できる考えだと思います。
また、事業者や起業家を支援する場合、最初に「計画づくり」の支援から始まることが多いですが、エフェクチュエーションのアプローチも、ぜひ支援の引き出しに入れておきたいですね。
中郡さま、念願の「エフェクチュエーション」の考えやアプローチをわかりやくご紹介いただきまして、ありがとうございました!
おわり