群馬県立自然史博物館企画展「ポケモン化石博物館」の感想
前から気になってたので無理してもらって午後に「ポケモン化石博物館」見に群馬県立自然史博物館に行きました。最寄りの上州七日市駅から大体2km位ですかね。今日は幸い曇りだったのでそこまで苦ではありませんでしたがそれでも蒸し暑い時分は暑いですねェ。久っしぶりにかき氷食べましたわ。かき氷はなんか粒が粗くて歯に障るから好きではなくまあ3~4年はご無沙汰ですが、最近は特製でないかき氷でも結構細かいのですね。練乳ブームも後押しして半分ソフトクリームみたいな物で美味しかったです。その分融けるのも若干早い嫌いがある気がしたのはシロップの多さと湿度のせいでしょうか、時代は変ったものです。閑話休題。
本題に戻りましょう。かき氷を食べて大体16:00に入館。その後¥1,000でチケットを購入して(懐かしき大学時代と割引料金よ!)特別展の会場に入場。今回は残念ながら時間が足りずダーウィンとT-REXロボとの再会は果たせず。
「思ったより実物の説明が多いな」というのが第一印象だった。勝手な予想としてはポケモンがどう現実の古代生物のパロディを行っているかの説明がメインなのだと考えていたが実際はむしろ逆でポケモンの骨格想像図や実物大のフィギュアはソコソコに化石の展示が相当に多かった。驚いたのが展示された標本の多くが群馬県立自然史博物館所属の物が思いのほか多かった事だ。こんなに化石を収蔵していたのかと驚いた。
この特別展は畢竟そのポケモンの想像のフィギュアと実物の調和ではなく対比がメインであるように思えた。確かに様々な工夫が凝らされたアマルルガの骨格想像図はそれはそれで迫力があったが、その隣に展示されたアマルガサウルスの標本に見られる骨格のサイズ、実際に草を食み繁栄させた歯の並びの彫琢、骨の多さと精妙さは圧巻であった。それはぼうくんポケモン ガチゴラスの骨格の隣に置かれたティラノサウルスの骨格がそのパロディとは比べるべくもない程に暴力的な、地球史上最強の肉食獣のオーラを漂わせていた事と呼応している。
とどのつまりこの「ポケモン化石博物館」は単純にデフォルメされたポケモンと複雑な現実の生物を対比させ後者の優越を明確にする企画であったと言える(前者のデフォルメはそれはそれでその巧みさは買うべきだろう*1)。私はこれは確かに『ポケモン』でしか無しえない企画だなと思った。
『ポケモン』というのは言うまでもなく世界で最も有名なキャラクターブランドの一つだ。現実の生物や自然をモチーフにした者ならその多様さと長寿は随一だろう。詰り『ポケモン』はその認知度が他のブランドと比べ圧倒的であり所謂「ミーハー」も多い。この企画展は却ってそのミーハーの多さが功を奏したように思われる。要するに、一々現実とケンカしなくていい程に『ポケモン』は成功した。だから、より複雑で精緻な現実への橋渡し、悪し様に言えば噛ませ犬としての役割を何の屈託も無く行えたのだろう。これが『モンハン』や『パズドラ』ではどうだろうか?或いは『遊戯王OCG』は?作品の優劣ではなくこと生物及び生物学のパロディという領域に於いては『ポケモン』に匹敵するブランドは無いだろう。
この企画展は小さい子供が多かった。子供は燥ぎながらリリーラのフィギュアを観、アマルルガの巨大な骨格のスケールに感嘆し、ガチゴラスの前で写真を撮ってもらっていた。然し彼等は後で思い起こすだろう。あの展示に於て場の空気を真実支配していたのは広間の入り口に君臨し雄大な乱杭歯―整然としたポケモンの骨格と対となるような―を堂々と見せていたアマルガサウルスの全身骨格である事を。『ポケモン』はその臆面も無い機能美の称揚を行う恐竜と自然のその巨大さに比べれば卑小なパロディに過ぎない。然しその卑小さの堂々たる提示にこそかのブランドの偉力があるのである。
*1:なお私はそれが全くたくまざる成功であったとは思わない。今回の展示は軟組織化石に対する説明が多く、それを用いた現実の復活生物学の是非や困難について触れられており、更にはカラフルなポケモンに比して現実の古生物の再現イラストは(最新研究により黒色の羽毛と推定された始祖鳥を除いて)敢えてセピア色に統一されている。それらは、現実の古生物学の歩みとポケモンのそれの荒唐無稽(それは悪罵ではない)さの対比をまざまざと見せてやまない。