波のカナタ 高1_10

柚子 小田哲 晶 功
高校一年の美術の授業が終わった。
柚子先生は、波の高校を去り、遠くの小学校に非常勤講師で赴任すると、女子生徒に聞かれて話している。

小田哲が晶に尋ねる。
「知ってた?」
「今、知った」
小田哲が、先生のところに行く。

「センセー。酷いじゃん。どうして俺たちに何も言ってくれなかったの? お別れ会とか、デートとかさ。したかったのに」
「ごめんごめん! 内示が出るまで言えなくて。上からのお達し。悪く思わないで」
小田哲と先生が、いろいろ話している。

「お先に」晶は、教室を移動した。
どうして。どうして何も言ってくれなかったの。俺が……子供だから?
黙っていなくならないで。彼氏じゃなくてもイイ。一番じゃなくてもいい。だから。だから__。
どんな繋がりでもいいから。切らないで__。捨てないで__。お母さん。(て言ったらキミはちょっと!って言うかな)
柚子。ボクを一人にしないで。抱きしめて__

次の日の終業式。晶は、前の晩に一睡も出来ずに、微熱が出た。高校を初めて休む。
終業式が終わって小田哲が川瀬先生のところに挨拶に行く。
「センセ。いつ、行くの?」
「今日」
「そお。連絡先教えて」
「いいよ」連絡先を陰で交換する。

「ねー。もしさ」
「ん」彼女と別れたら、相手してくんない?
「あ。先生、彼氏いんの?」
「どーだろね。ってキミ興味無いでしょ?」そーでもないよ。けど。ちょっと遠距離は無理かな。なんせ甘えんぼさんだから。
「じゃね。先生。またこっちきたら遊ぼうよ」
「ありがとね」小田哲が走っていく。

自分の部屋の布団の中でゴロゴロしている晶。もう、どうもないのだけど、なんか落ち込んでる。結局、先生と教室でちゅうできなかった。それに、春休みに先生の薬指に指輪とかつけてみたかった。それから
ピンポンが鳴って自分しかいないので、インターホンのカメラの画像をみる。佐々木功がいる。晶、心臓が一気にドクンと高鳴る。ドアを開ける。
功は、柚子先生に頼まれてお見舞いにきた。ゼリーやらスポーツ飲料をもらう。先生が、お金をくれたと言う佐々木功。
「大丈夫ー? 先生が心配してたよ」
「ありがと。もう平気」
「そっか。先生に晶の様子見てきてって」
……。先生。ごめんね。仕事なんだから、しょーがナイじゃんね。ごめんね。子供で。
もう、お別れなんだね。
いつも暖かかったキミ__ ずっと包まれてたかった。キミのぬくもり。
だけど、今のボクじゃ先生を引き止めることなんてできナイ。

佐々木功がボーッとしている晶を覗き込む。
「晶」
「ん」
「平気?」
「うん。先生、いつ出発すんのかな」
「今日の夕方の便だって」え。今日?

「お別れ言いたい。__お礼もちゃんと言えてない」
功が携帯を出して時間を見る。
「今から急げば間に合うかも。晶、連絡先教えて。先生に聞いて送ってあげる。晶はすぐ空港に向かって」
「うん。功くん。ありがと!」
「急いで」
晶はジャージのまま、携帯と財布を持って自転車で駅に向かう。

©️ 石川 直生 2020.                                                 

晶 柚子 サヨナラなんていらない                               電車で空港に向かう晶の携帯に功から連絡が入る。先生の搭乗する飛行機の時間と搭乗口を教えてくれる。晶が今から空港に見送りに行ったから、時間あったら入らないでまっててと功が連絡した。佐々木功も何もなければ一緒に行ってもよかったのだが、玲に呼び出される。玲は、一人で行くのがヤだからと佐々木功をなにかと引っ張り回す。美少女と一応デート?(実質的にはパシリに使われているような……) どーでもいい話しかないのだけど。

搭乗口に着いた晶。椅子に座っている先生らしき後ろ姿を見つけた。近付くと、男が先生にチケットらしきものを渡している。晶は、立ち止まる。
え。男連れ? 男は流だった。ミュージシャンみたいなパンクルック。相変わらずカッコイイ。
流は、柚子のとなりに座り笑って話している。

自分を励ます晶。
しっかりしろ! 先生と__最後かもしれない。
笑ってサヨナラ__するんだろ。(ヤだけど)

二人のところに近付く晶。
「柚子ー! この人誰」ダメだ。全然笑えない。こんな言い方。先生の恋人でもなんでもないのに。
なのに、言葉がとまんない。どうして。どうして自分じゃなくて__

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佐々木 功です。え。ありがとう。晶ー!なんか挨拶だって。晶です。え? えっと。え。柚子です。お金は大事だよ〜♪お気持ちだけで。