波のカナタ 高1_7

柚木 彼方
ずっと、ヒーローになりたかった。
大好きな人が、悲しいときには駆けつけて、敵を倒して守ってあげるよ。大切な君を。

__なのに。僕にはヒーローは無理らしい。
子供の頃から、男子につき飛ばされる。泣かされる。悪口言われて、仲間外れにされる。

中学生になった。どうして男ってこうなんだ。人の身体を勝手に触ってんじゃねーよ!
俺は、男だっつーの!!
女子に相手にされないからって。彼方でいいや?
__こっちは、よくない!!
俺は、かわいい女子を守るヒーローがいいんだって!

なのに出会ってしまった。
僕のヒーロー。カッコイイ。イケメン。男から助けてくれて。お礼が言いたかったのに、そんなことどーでもいいみたい。風のように去って行った。俺と関わらない方がいいよ、なんて言ったけど。
__好きになるなって方が無理でしょ。

あんな人のとなりにいるなんてムリだよね。
今は、無理だけど。もし、いつか君が悲しいときには、僕を思い出して。ほんの束の間でいい。君のとなりで、笑えたら。

影でいい。知られなくてもいい。そっと見守るよ。
僕だけのヒーロー。大好きなひと。

© 石川 直生 2021.

晶 柚木 彼方
秋になる。文化祭の合唱コンクールの練習が終わってクラスの皆が帰る。晶は、定期を補助カバンに入れたまま高校に置き忘れたことに気づき駅から教室に戻る。暗い教室の中、電灯の付いた教室の前を通りかかる。

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佐々木 功です。え。ありがとう。晶ー!なんか挨拶だって。晶です。え? えっと。え。柚子です。お金は大事だよ〜♪お気持ちだけで。