36歳がペヤングを初めて食べたのでレビューする
まじめに、地道に、清潔で美しくすこやかな毎日を目指して生きてきた36年間。
ペヤングを食べたことがない。
先日、初めてペヤングを食べた。その感想を書くnoteがこれである。
「それにしてはスクロールバー小さすぎないか」と思うかもしれないが、徹頭徹尾ペヤングの感想しか語っていないことをお断りしておく。
なぜ、食べたことがなかったのか
「食べたことがない」に理由が必要かとも思うが、説明する。
私にとって、焼きそばを最も早く確実に食べられるメソッドといえば「UFO焼きそば」である。
小学生のときにUFO焼きそばを食べた感激。
「お湯をかけるとふにゃける麺」がラーメン以外にもあるのか。そしてこんなにうまいのか。ソースという武器に胃袋を射抜かれる経験。
その後、ペヤングの存在を知っても「いや、焼きそば言うたらUFOやろ」と一刀両断し、気にも留めなかった。
つまり、ペヤングを食べたことがないのは「この世にUFO焼きそばが存在するから」だ。完全無欠、理論武装守備力MAXの理由である。
考えてもらいたい。
あなたが朝日新聞を購読しているとする。追加で読売新聞を読もうと思うだろうか?
よほど情報収集に熱心な人でもない限り、新聞は一社で事足りる。セールスが来たところで「うちは別のを取ってますので…」としなやかに追い返すだろう。
それと同じく、即席焼きそばは既にUFOを購読、いや購食しているので、十分間に合っていたのだ。
しかし、年とともに思い知るのが世界の広さ。このままペヤングとクロスしない人生でいいんだろうか?
図書館で普段読まない新聞を読んだとき、4コマ漫画がコボちゃんだというだけで異国の空気を吸い込んだ気分になったではないか。
UFO焼きそばに慣れ切った舌にペヤングを載せて、体内を海外旅行にしよう。
ペヤング初見プレイ
ペヤングさん、はじめまして。どうぞお座りください。
パッケージで最も大きい文字は「やきそば」ののれんである。
一度聞いたら忘れられない「ペヤング」という商品名を持ちながら、パッケージでは「やきそば」の方が目立っている。肩書のフォントが名前より大きい名刺か。
しかし、永遠のライバルことUFO焼きそばを見れば、なぜ「やきそば」の文字がこんなに大きいのか、よくわかる。
焼きそばだ。実写だ。食欲をど真ん中一直線に攻めてきた。
そう、ペヤングのパッケージには写真が無い。「やきそば」と書かないと何者なのかわからないのだ。
それに対し、茶色いビジュアルで視覚に訴えてくるUFO焼きそば。TwitterよりInstagramメインで活動するタイプだな。
あまつさえ、焼きそばなのに「ソース食おうぜ!」とアイデンティティを軽やかに放棄している。カレーが飲み物ならソースは食べ物か。
ペヤングに戻ろう。
昔のゲームソフトには紙の説明書が同梱されており、律儀な私はプレイ前にきっちり読破していた。
あの頃のように調理方法をじっくり読み込む。まだ少年の魂は失われていない。
さらに深く心に刻み込むため、感情をこめて調理方法を朗読してみた。
ちなみに、他の人のstand.fmにおじゃましたことはあるが、自ら配信するのはこれが初めてである。はじめてづくしのnoteだ。新生活の季節にふさわしい。
ペヤング開封の儀
ペヤングを包むフィルムには、いかにも「ここに指を引っ掛けてくだせぇ」と言わんばかりの継ぎ目がある。
だが、素手で引っぺがすなど原初の所業。初めてペヤングと相まみえた色節なのだから、現代文明を片手に美しく開封したい。
そこでこんなものを購入した。家庭の必需品「ダンボールカッター」である。
ダンボールを切るだけではなく、フラット面を使えばコピー用紙を1枚だけ切れるという。デリケートな開封には最適だ。
ではさっそく、フラット面をペヤングにあてがい…
あてがい…
失敗したら怖いので、まずは馴染み深いUFO焼きそばを切ってみることにした。人柱となってもらおう。
ダンボールカッターでぐるっと。わかりにくいが、フィルムがちゃんと切れている。
UFO一周!切れたぞ!
UFO焼きそばの抜け殻がこちら。
さあペヤング、次はお前がこうなる番だ。
お?これは…
切りやすい!まっすぐだからカッター使いやすい!
そうか、このための長方形だったのか!
大過なく切り終えた。ダンボールカッターの威力をお見せしよう。
これが、こう!
スパーン!
外装フィルムの下半分だけが見事に切れた。剣の達人が闘いの前にこういうデモンストレーションで力を誇示するシーンありがちである。その2ページぐらい後に主人公に一蹴されるシーンありがちである。
そして、これがペヤングの空き部屋。
「この部屋、ペヤングさんが住んでたんですよ」という触れ込みで売り出せば入居者が殺到するだろう。
では、残った上半分のフィルムを…
せりゃっ!
緻密な開け方をしておきながら、最後は結局素手ではぎ取った。丁寧に進めてきた仕事が偉い人の鶴の一声でちゃぶ台返しされたかのようだった。
メイキング of ペヤング
すっぴんになったペヤングである。すっぴん風メイクかもしれない。ブルベの肌が美しい。
首が痛い人へ。「スマホを右に傾ける」という手もありますよ。
UFO焼きそばと違うのは、かやくが袋に入っているところ、ふりかけの他にスパイスの袋があるところ。
ふたを開けると、各袋が思いのほか整然と収まっていた。パッケージデザインといい、UFO焼きそばと比べて知性が感じ取れる。
焼きそばの命はソース。袋を取り出し、UFO焼きそばのソースと並べてみた。
UFO焼きそばのソースには「フタの上で温めてください」とあるが、ペヤングには無い。理由は終盤で判明する。
さて、調理方法に従い、かやくを麺の上にあけるところから始めよう。
かなりの量のかやくが麺の下に入り込んでしまった。いいんだろうか。
しかし、覆水盆に返らず、覆かやく袋に返らず。このまま突き進むしかない。
料理って、プログラミングと違って取り返しがつかないから難しい。
熱湯を注ぎ込む。光の加減で内側の線が見づらい。
あと100回ぐらい作ったら、線など見なくとも感覚でぴったりの量を注げるようになるかもしれない。自転車における補助輪みたいなものだったのか。
フタをガッチリとロックして3分待つ。
「3分」という時間はどうやって決まったんだろうか。最適な待ち時間を探るため、まるか食品の社員が「2分待ったバージョン」「3分待ったバージョン」「4分待ったバージョン」を食べ比べてみたにちがいない。ことによると「2分待つ課」「3分待つ課」「4分待つ課」という専門の部署があるのかもしれない。博多出身でラーメンは常に「バリかた」を注文するタイプの新入社員が「4分待つ課」に配属され、人事のミスマッチを愚痴ってるに違いない。
待ってる間はこういうことを考えている。
3分たった!
湯切り口を解放、おおこんな形をしているのか!メタリックでかっこいい!
だぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ボンッ)(びくっ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
お湯を捨てたペヤングがこちら。傾けたせいで麺が片寄り、遠足に持っていった弁当状態になっている。これを回避する術を人類はまだ持たない。
あとはソースを絡め、ふりかけ・スパイスをかければ…
できた!ビストロスマップっていつの間にか出来てるよね。
さて、食べよう。
私の身体にペヤングが!
おいしい。
…けど、思ってた「焼きそば」のおいしさとは違う。
これ、旨さの8割はふりかけによるものだな。ソースはかなりあっさり目。
「パレートの法則」を思い出した。売り上げの8割は2割の社員が生み出している、というやつ。ペヤングの旨味の8割は、2割、いや量的には1割あるかどうかも怪しいふりかけによって生み出されていた。
もちろん、焼きそば部もおいしい。ただ、予想よりはるかに控えめな味で驚いたのだ。青のり、ごま、紅ショウガのポップなおいしさを陰ながら支えている印象である。
たとえるならそうだな、160kmのど真ん中ストレートを予想してバッターボックスに立ったら、水玉模様のボールが山なりにゆ~っくり飛んできた感じ。「え?え?」って戸惑ってるうちにスコッ!とストライク取られた感じ。
比較として、UFO焼きそばも食べてみた。
味の主張が強い。
ソースの粘度が明らかに違う。麺一本一本が「さあ、俺を味わえ」と肉体美を見せつけているかのようだ。
ペヤングを食べた直後で余計にそう思うのかもしれないが、濃厚さに胃袋を揉まれる感触を味わった。「食いでがある」というやつだな。
いわば体育会系のUFO、文化系のペヤングといったところか。
大学の文化祭でそれぞれの焼きそばが出てきたら、作ってる学生がラクロス部か落語研究会か推測できそうである。
この味の違いはどこから来ているのか。
双方のソースをちょっとずつ皿に出してみた。
UFOの方が明らかに油分が多い。透明なオーラのごとく、油が黒いソースを包み込んでいる。こってり感はここから生み出されていたのか。
おそらく、UFOのソースをフタの上で温める必要があったのは、冷えて固まっている油をとかすためだろう。
まあ、こういうこともしたくなるよね。オッドアイの少年。
結論
ペヤングおいしい。
しっかりUFO焼きそばと味が差別化されているのが良かった。やはり食べたことがないものは食べてみるべきだな。
今度は一平ちゃんを食べよう。
お金をください!