野田地図 フェイクスピア
36年前の8月12日午後6時56分28秒 日本航空123便が群馬県の御巣鷹山に墜落した。死傷者を524名出した大きな航空事故である。
野田地図による「フェイクスピア」は、この日本航空123便のボイスレコーダーに残された墜落までの30分間のやりとりをそのままセリフにし、ノンフィクションを織り交ぜたフィクションである。
ノンフィクションとフィクションが行き来するのはボイスレコーダーの事実の言葉と、それをもとに創造された芝居の言葉だけでなく、時折役者本人(白石加代子)と役柄(イタコのぶっちょ)も現実と物語を行き来し、それでも作品が損なわれずかつ深みを出しているのは、野田秀樹の脚本と役者本来の力量によるところが大きい。
「コレハマコトノハダロウカ」
何度となく出てくるこの言の葉。
乱暴にも取れるこの言の葉。
36年前の8月12日午後6時56分28秒までの30分間に発せられた真の言の葉。
これは真の(言の)葉だろうか
語られ始めた真の葉、決して聞き逃しちゃいけないよ
クライマックスは飛行機の爆発音と共に始まる。ボイスレコーダーに残された真の葉と、パイロットたちのやりとりと搭乗者たち。
頭を下げるのは何なのか?
両手でやるのは誰なのか?
下げた頭を上げるのは何故なのか?
ノンフィクションの事実だけでは見えなかったものが、フィクションを織り交ぜて立体となって浮かび上がる。
ここで語られたことはあくまでもフィクションである。
でも、決して聞き逃しちゃいけない。
死のうとしたんじゃない。
最後まで生きようとしていたことを。
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