Hard Cakes
しみったれた 世の中のせいだ
つかれた顔の姉が
シングルのトイレットペーパーを
大事そうに両手で抱えて帰って来たのも
いつも賑やかな神戸の街が
彩度を落とし
苦しそうにいそいそとしているのも
人は流動体―。
生命の保全の為に、群れを成す
快楽に浸された瓶の中で粘度を増して
他者に己の逃げ道をさがしている
飲みにもいかずに 帰って来たひと
守りきれない仮面で覆い 言葉を抱えるひと
流れに逆らえず波にのまれたひとがさざなみを立てる
よりかかる ひと
ささえあう ひと
つぶしあう ひと
うばいあう ひと
しのびよる ひと
耐えがたい渦の中で私はいる
耐えがたい渦の中に私までいる
からっぽの陳列棚に笑いたくなる
硬い表皮でまもられたあまい核を
王冠の名を配された ネメシスは
容易く圧し斬ってしまった
人間とは こんなにも脆い生き物なのか
-ひとり ひとつ わけあって -
張り出された紙はなんだか幼子を諭しているみたいだ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?