靴で相手の性格が分かる
履いている靴からも第一印象が形成されるいう趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。
人はほんの数秒の間に相手の印象を形成し,全く面識のない人の性質を特徴的な部分(e.g. 金髪)だけ抜き取って理解しようとします。
相手の性格を一目から理解しようとすると,外見的特徴が第一印象の形成に影響を与えることが多いです。例を挙げると,以下のようなことが分かっています。
・ゆっくり歩くと信頼できると思い込む(2)
・話すスピードが速いと有能に見える(3)
・金髪だとお金持ちだと思われる(4)
しかしこれらの外見的特徴から形成される第一印象は当の本人の特性とはほとんど関係がないことが分かっています。
ただしそのような第一印象に関する研究のなかには,ほんの数秒で相手の性格を見抜くことができることを示したものもあります。
教授の能力に関しては数秒間見て評価した結果と半年間その教授の講義を受けて評価した結果が一致したことを示す研究があり(5),頼りにできる直感もあるようです。
今回紹介する論文は履いている靴の種類から相手の性格を判断できるかもしれないことを示したものになります。
2012年にカンザス大学のオムリ・ギラスらが靴によって第一印象はどう変わるのかについて調べるために実験を行いました。
事前にカンザス大学の大学生208名に所有している靴の写真を提供してもらい,自分自身の性格についての質問紙に答えてもらいました。
実験の対象となったのは,上記の提供者とは別のカンザス大学の大学生68名でした。
実験参加者には提供された靴の写真に対して,以下の項目に従って評価を行ってもらいました。
・性格
・性別
・愛着スタイル
・政治的志向etc
これらの第三者からの靴を基にした評価は実際の本人の性格や特性と一致するのかを解析しました。
実験の結果,靴を基に約90%以上の確率で靴の持ち主の性格を見抜くことができた。第三者評価で手がかりとなった靴の特徴は具体的には以下のようになりました。
・協調性が高い人は安価で,靴の先が尖っていない,ブランド物でない靴を履く
・外向性が高い人は色鮮やか・明るい色の靴を履いている
・メンタルが安定している人は靴の先が尖っていない,靴底が低い靴を履く
・収入が高い人の靴は高価なものが多い
・創造性豊かな人は靴の色が明るい
・真面目な人の靴は使い込まれているが,良く手入れがされている
またこの他の年齢や収入,性別,愛着スタイルに関しては靴を見るだけでも正確に持ち主の特性を推測できていました。
この結果は教授の能力をほんの数秒で見抜くことが出来るのと同じで,相手の性格を把握するのときに頼りにしてもいい指標である可能性があります。
しかし実生活の中では,歩き方や喋り方,容姿など多くの指標を参考に第一印象は形成されます。上記で示した本当はその性格特性を持っていないにもかかわらず,信頼性が高いなどの印象を抱いてしまう外見的なてがかりがあるも確かです。
これからもこのブログでは,相手の性格を見積もるときに有効な手がかりとなるものを紹介していきたいと思います。
(1)Gillath, O., Bahns, A. J., Ge, F., & Crandall, C. S. (2012). Shoes as a source of first impressions. Journal of Research in Personality, 46(4), 423–430.
(2)Thoresen, J. C., Vuong, Q. C., & Atkinson, A. P. (2012). First impressions: Gait cues drive reliable trait judgements. Cognition, 124(3), 261-271.
(3)Smith, B. L., Brown, B. L., Strong, W. J., & Rencher, A. C. (1975). Effects of speech rate on personality perception. Language and Speech, 18(2), 145–152.
(4)Marianne, L. (2001). First impressions and hair impressions: An Investigation of Impact of Hair Style on First Impressions Procter & GambleÕs Physique Hair Care Line, 1-53.
(5)Ambady, N., & Rosenthal, R. (1993). Half a minute: Predicting teacher evaluations from thin slices of nonverbal behavior and physical attractiveness. Journal of Personality and Social Psychology, 64(3), 431–441.
■第一印象の科学――なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?/アレクサンダー・トドロフ (著), 作田 由衣子 (監修), 中里 京子 (翻訳)
■美しさと魅力の心理/三浦佳世 (著), 河原純一郎 (著)
■第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい/マルコム・グラッドウェル (著), 沢田 博 (翻訳), 阿部 尚美 (翻訳)
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