見出し画像

会社員を卒業して起業する方に伝えておきたいこと|第二話 役員報酬について

最近、僕の周囲でも増えてきた会社員を卒業して起業する方々などに、ワンパクという会社の経営者として15年間悩みながら試行錯誤してきた経験を共有し、少しでも役立てないかという想いから、起業する上での考え方や注意点などを少しずつ綴っています。

第一話はこちらから

今回は起業して一番気になるであろう、”収入”に関することを書いておきます。なお、正しい知識を身につける上では、労働基準法、会社法や法人税法などを知る必要がありますが、ここでは基本的なことだけ抜粋してあります。


(その1)給与=いただくもの→支払うもの


従業員=社員を雇えば、当然ながら給与の支払い義務が生じます。会社員時代は給与は会社から”いただくもの”でしたが、経営側になると給与は”支払うもの”に変わります。

会社員時代に「給料日までまだまだ日があるなー」と思っていた感覚が、給与を支払う側になると「あれ、早い!もう給料日が来てしまったのか…。」という感覚に変わります。僕も創業から5年間くらいは、週に一度は通帳残高とにらめっこしながら、EXCELで3ヶ月先の会社のキャッシュが足りるのか、常にドキドキしながら計算していました。

そして当然ながら、社員への給与支払いが優先事項になりますので、役員への報酬の支払うキャッシュがなければ支給せずに、”未払金”(その3で後述)とするしかありません。

(その2)自身への支払い対価は”給与”ではなく”役員報酬”となる

会社員時代にいただいていた「給与」は、起業して「役員」になると「役員報酬」となります。

なお、企業が自社で働く役員や社員に支払うのは、基本的に従業員へ支払う「給与」と「役員報酬」のみです。ともに人件費となるので、会社にとっては経費計上が可能ではありますが、役員報酬は扱いが異なり、届出をおこなわないと損金算入できません。

役員報酬とは「役員」に支給される報酬のことで、会社法と法人税法では役員の扱いが異なります。また”取締役設置会社”と”非設置会社”では役員報酬額決定のプロセスも異なってくるでしょう。

中小企業の多くの場合は、”株主” 兼 ”取締役=役員”となっているケースが多く、役員である自身の役員報酬額を、株主である自身で決定するということになりますが、特に起業して1-2年で確実な売上げが見込めない中で、この金額をいくらにするのかが結構難しいのではないかと思います。下記の動画などを参考にしてみてください。


そして、役員報酬の金額を決定したら、決められた時期までに税務署に「事前確定届出給与に関する届出」を提出しないと、法人税の計算上、経費に入れることができません。

また、事前確定届出給与の届出は、期限があるため注意が必要です。詳しくは会計や税務などの専門家のサイトで確認してみてください。

(その3)給与や役員報酬は支払わないと”負債”になる

これは、起業したばかりだと、意外に知らない方がいるのではないかと思います。

役員報酬を沢山取ろうと思い、大きな金額を設定し、「事前確定届出給与に関する届出」をしてしまうことがあると思います。

もし手元にキャッシュがなくても、「自分に払わなければよいだけ」という安易な考えで大きな金額を設定してしまうと、後で後悔することになります。

理由は、支払われなかった役員報酬はB/S上では未払金という欄に残ってしまい、”負債”として扱われることになります。

これは役員報酬が支払われるまで残るため、例えば銀行からの借り入れを行う際に、この未払金について突っ込まれることになります。

(その4)役員賞与

支給金額・支給時期について、原則として株主総会において定めたうえで、その定めの内容を所轄の税務署へ、事前確定届出給与 賞与支払届として提出しておけば、社長や他の役員の方にも賞与を支給することができます。

しかしながら、この金額は原則、後から変更することはできません。

例えば、役員賞与金額を200万円で設定し届け出たとします。しかしながら会社の業績が振るわずに、100万円だけ支払おうとしても、税務署はこれを認めてくれません。

そのため役員賞与については、”支払うか”、”支払わないか”の2択になります。もし会社の業績が振るわない場合は、支給日到来前に役員賞与の全額を不支給する決議を取締役会等でおこなう必要があるのです。

事前確定届出給与の変更する場合、”やむを得ない事情”として業績悪化改定事由・臨時改定事由が認められる場合がありますが、もともと利益調整を排除する観点から、事前に支給額と支給時期を定め、その定めにのっとって支給したものについてのみ、損金として認める目的のため、やはり届出金額の変更は難しいと言えるのではないでしょうか。

まとめ

会社員をやっていると、給与計算や税金の届出などは、会社の経理や総務部門がやってくれるため、ほぼ意識することがなかったのではないかと思います。

しかしながら、会社を起こした場合、自分自身の報酬を決めるだけでも、これだけのことを認識し、対応していかなければならないのです。それらを知らないままに起業してしまうこともあると思いますが、キチンとした知識を身につけ、適切な対応をしていかなければ会社を成長させていくことは難しいと思います。起業した方はぜひ頑張っていただければと思います。

いいなと思ったら応援しよう!