見出し画像

一口に警察といっても色々ある。サイバー警察局、サイバー特別捜査部…その役割と連携

 今回は、サイバー犯罪から私たちを守るために、警察組織がどのような体制でサイバー関係の対策に取り組んでいるのかについて調べてみた。


👥組織構成

 まず、警察組織の関係は次の図のとおり。(サイバー関連のみ抜粋)
なお、「警察におけるサイバー戦略について」に基づき、2022年4月に組織改編されている。(サイバー特別捜査部は、その時点ではサイバー特別捜査隊だった)

警察組織の関係図(サイバー関係のみ)

 捜査の現場である「都道府県警察」(警視庁とか埼玉県警とか)があり、それを指導監督しているのが「警察庁」。
 なお、警察の民主的運営と政治的中立性を確保するため、「警察庁」の上に「国家公安委員会」が、「都道府県警察」の上に「都道府県公安委員会」(埼玉県公安委員会とか)が設けられている。

 なお、警察庁内部の詳細は次のリンク先参照
https://www.npa.go.jp/joutuu/001.htm

____________________________________________

🏢サイバー警察局(警察庁)

 2022年に警察庁内の情報通信局を組織改編して設立された。

 サイバー警察局は、警察庁内各局や国内外の多様な主体と連携し、サイバー政策の推進における中心的な役割を担う

警察におけるサイバー戦略について 第2、1より抜粋

 警察のサイバー政策決定の推進に関連して、官民連携、人材育成等の基盤整備、各国との情報交換、サイバー事案の捜査指導、高度な解析への技術支援等の推進等を行っており、実際に操作を行う実行部隊ではない

 なお、前回の記事に記載した「個人情報保護法サイバーセキュリティ連絡会」にも参加予定となっている。

____________________________________________

🕵️サイバー特別捜査部(警察庁 関東管区警察局)

 上のサイバー警察局と同時(2022年)に、関東管区警察局内に設立された「サイバー特別捜査」が、2024年4月に「サイバー特別捜査」に格上げされた。
 因みに、管区警察局というのは、警察庁の地方機関であり、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州の6つあり、管内都道府県警察の監察、指導や広域捜査の調整を行っている組織だ。

令和4年(2022年)4月、重大サイバー事案の対処を担う国の捜査機関として、関東管区警察局にサイバー特別捜査隊が設置されました。同隊は、全国警察からサイバー分野の知識や経験を豊富に持つ人材を登用するとともに、高度な資機材を整備し、国際共同捜査等を通じて、重大サイバー事案に係る捜査や実態解明を推進してきました。

 令和6年4月に、同隊は新たにサイバー特別捜査部に改組されるとともに、その下に専門部署が設置されました。これにより、捜査はもとより、重大サイバー事案の対処に必要な情報の収集、整理及び総合的又は事案横断的な分析等を行う体制が強化されています。

https://www.kanto.npa.go.jp/about/syoukai05-4.html  より抜粋

  このサイバー特別捜査部では、外国捜査機関等との国際共同捜査に積極的に参画するなど、重大サイバー事案への対処を担っている。

なお、「重大サイバー事案」というのは次のとおり。

サイバーセキュリティが害されることその他情報技術を用いた不正な行為により生ずる個人の生命、身体及び財産並びに公共の安全と秩序を害し、又は害するおそれのある事案のうち次のいずれかに該当するもの

(1)次に掲げる事務又は事業の実施に重大な支障が生じ、又は生ずるおそれのある事案
(i)国又は地方公共団体の重要な情報の管理又は重要な情報システムの運用に関する事務
(ii)国民生活及び経済活動の基盤であつて、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生ずるものに関する事業

(2)高度な技術的手法が用いられる事案その他のその対処に高度な技術を要する事案

(3)国外に所在する者であつてサイバー事案を生じさせる不正な活動を行うものが関与する事案

警察法 第5条6号ハ

 関東管区警察局の組織ではあるが、重大サイバー事案への対処については全国が管轄で、サイバー警察局と違い、実働部隊として動く。

____________________________________________

🔍情報解析部門

 情報技術解析部門においては、幅広い捜査ニーズを捉えた的確な情報技術解析等を実施する。

警察におけるサイバー戦略について 第2、1

 この「情報解析部門」というのは、恐らく「サイバー警察局の情報技術解析課」だけではなく、管区警察局の下にある「情報通信部内の情報技術解析課」について言っているのだと思われる(課名から判断)。

 必要に応じて各都道府県警察に協力することで、サイバー犯罪への対応力を高めている訳だ。

____________________________________________

👮都道府県警 サイバー犯罪対策室など

 重大サイバー事案以外の事案は各都道府県警察のサイバー犯罪対策室等で取り扱う。

 なお、都道府県警察によって部署名は異なっており、例えば埼玉県警ではサイバー局宮崎県警ではサイバー戦略局等、局に格上げされている。

____________________________________________

🙋サイバー防犯ボランティア

 「組織構成」の図の中には描いていないが、「サイバー防犯ボランティア」なるものが存在する。

 サイバー防犯ボランティアは、「自分たちの利用するインターネットの安全は自分たちで守る。」というコンセプトの下、安全で安心して利用できるインターネット空間を作るため、
① 被害防止のための教育活動
② 広報啓発活動
③ サイバー空間の浄化活動
等を行う自主的な防犯活動です。

https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/what-we-do/ppp/csvolunteer.html  より

 サイバー犯罪を予防するための、あくまで自主的な取り組みであり、警察主導ではないが、活動事例を見る限り、警察から表彰されたりしているようだ。

 高度なサイバー攻撃には直接関係ないかもしれないが、サイバー空間を良好に保つことで、サイバー犯罪を減らす効果はあるのではないだろうか。

____________________________________________

🫠感想

  • 同じ「警察」と名がついていても組織が異なるなど、警察組織全体の関係は分かりにくい…。

  • サイバー犯罪に関して組織が改変されているというのも、デジタル化社会の中で、それだけサイバー犯罪・攻撃が広がっていることの証左だろう。

  • 「公安委員会」って、警察の上にいる組織だったのは初めて知った。自動車の免許証にも「〇〇県公安委員会」とか書いてあったので、県警内部の組織だと思っていた。

  • 委員会」って、前回の記事で見た「個人情報保護委員会」もそうだが、何気に強力な権力を持つ組織なんだと思った。
    委員会なんて、学生の頃しか縁がなかったし、大して権力もなかったが、国の委員会は全く違うようだ。気を付けよう(何に?)。

  • 「サイバー特別捜査部」が、「関東管区警察局」にあるのは意外。他の管区警察局には無いので、それならサイバー警察局内に設置してもよさそうだが、恐らく過去の経緯や既存の部署等があり、6つある管区警察局の代表としてそこに設置したという事なのだろう。

  • 都道府県警で管轄が分かれているが、サイバー犯罪だと簡単に管轄を超えてしまいそうだと思った。その場合、スムーズに他県警や他管区警察局と連携できるのだろうか?
    国外組織絡みなら「サイバー特別捜査部」の管轄なのだろうが、そうでないものについては連携が大変そう。

 正直、自分でも良く分かっていなかったので、今回の記事では勉強になった。
 それにしても、国家規模の組織って巨大なので、色々複雑にならざるを得ないのだろうなぁ、と感じた。ましてや、「サイバーセキュリティ」という枠組だと、警察に留まらないからさらに複雑だ。

 これからも「サイバーセキュリティ」の枠組みの中のプレイヤーや制度等について調べていきますので、興味のある方は是非お付き合いください!

参考記事


いいなと思ったら応援しよう!