リモート落語デビュー。
落語は生がいちばんです。
噺家さんとお客さんが同じ場所で同じ空気を吸い、同じ話をじっと聞く。
いまという瞬間を楽しめるのが落語の醍醐味でしょう。
そうは言っても。
いまの世の中、せまい会場でひしめき合って見るわけにはいきません。それはコロナが許しません。
しかし同時に、いまの世の中は素晴らしい。
会場に行かなくても、生で映像を楽しめる道具をさまざまに作ってくれました。
リモート配信です。
落語をパソコンの画面で見るなんて、10年前には想像もしなかった世界。
しかも生の落語。
それを叶えてくれるのが『渋谷らくご』です。
渋谷駅から雑踏の中を歩いて約15分。ユーロライブという映画も見られるような会場で毎月開催されている落語会。他の寄席とはちょっと雰囲気がちがって、少しおしゃれな感じ。だって噺家さんがライトアップされて、お客さんの席は暗くなるんですから。そんなしゃれた演出の中で落語を見られるわけです。
この『渋谷らくご』がリモート配信をはじめたと聞き、ずっと気になってはおりました。あの雰囲気も好きだったし、なにより出演者の顔ぶれが若手から真打、名だたる師匠方まで幅広い。新作も古典も楽しめる夢のようなラインナップなのです。
生といえども、画面越しでの落語会。
どうなんだろう。
別に落語にそれほど詳しいわけでもなく、最近は寄席も全然行かなくなった身ではありますが、やはりちょっと躊躇していました。そして木戸銭は実際に来場した時の金額と同じ2500円。どうなんだろう。見てみてがっかりしたら嫌だなぁ。ちゃんと小さな声とか聞き取れるのかなぁ。なにより、落語家さんとお客さんが別々の空気を吸っている。これは落語にあるまじき行為なのでは、、、なんて視聴しない理由を頭に並べていました。
そして昨日。
やっぱり気になって渋谷らくごのホームページをチェックしたら、好きな噺家さんが出るとのこと。うーん。来場者も少ないみたいだし、応援するつもりで一つ観てみようか、となり思い切ってオンラインチケットを購入。
結果。
とても良かった。うん、これはいいかもしれない。
カメラが落語家さんの真正面だから、特等席で観ている気分。さらに、となりの人の咳払いとか邪魔するものがない。当然、前の人の頭が邪魔で気が散ることもない。しかも飲食し放題。酒のつまみに、生配信なんてオツなこともできます。
もちろん、会場の雰囲気は味わえないけど、こちらが映らないことをいいことに何でも自由に楽しみながら落語を見られるのがとてもよかったです。
そしてびっくりしたのが、場の空気感。リモートでも伝わるんですね。
トリの古今亭文菊師匠は、40代ながら80代にも見えるという不思議な空気感のベテラン。噺が進むにつれて、話しの中に引き込まれるような空気に変わったのですがそれはリモートでも十分感じることができました。これがきっと落語家さんの話芸なのでしょう。ありえませんが、Wi-Fiにのって、会場の空気を運んできたかのようでした。まさかリモートでこの感覚を味わえるとは。すごい時代です。
同じ空気を吸えなくても。生配信なら、同じ時間を共有できるんですね。
思い切ってチケット買ってみてよかった。
リモート落語、当たり外れあるかもしれませんがまずは『渋谷らくご』で体感してみてはいかがでしょうか。
それではまた次回。
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