ブサイクと匂いと満員電車
満員電車とかで隣りがたまたま女子だとテンション上がる。
顔をまじまじと見るわけでは無いが、なんとなくの雰囲気で可愛いのでは? と思ってまたテンションが上がる。
しかも驚くことに、可愛い感じの女子はみんないい匂いがするのだ。みんなそれぞれ違う匂いなのに、みんないい匂いがする。
みんな違ってみんないい。匂い。
これはもう、地球の七不思議として数えてもいいのでは?
そんな素敵なことを考えているとひとつの疑問が浮かんだ。
「反対に女子はどう思っているのだろう」
隣にいい匂いの男子が来たら嬉しいのか?
いや、きっと嬉しいに決まってる。昔、ホットドックプレスというヤングな雑誌に書いてあったような気がするし。
そうなったらやる事は一つだ。
「いい匂いになればモテるかもしんない」
僕はさっそく高めのシャンプーとボディソープを買おうと思った。思ったが思いとどまった。
「こんなブサイクがいい匂いしてもムカつかれるのでは?」
と不安になった。
ブサイクが臭いならそのままムカつくだろう。しかし、ブサイクがいい匂いしても逆にムカつかれるかもしれない。
「ブサイクのくせにいい匂いさせてんじゃねーよ」
このように思われているに違いない。ブサイクなのにいい匂いというギャップのせいで普段の5倍くらいムカつかれる可能性だってある。
5倍もムカつかれるならこのままでいいじゃないか。
ありのままの俺でいいんだ! 臭いブサイクでいいんだ!
その夜は酒浸りになった。ブサイクならブサイクらしく自信を持っていればいいんだ。臭くたっていい、虚構に溺れてしまうなら自分の存在を否定してるのと一緒だ。よくわからないがたぶんそういうことだ。僕は2杯目の梅酒を残したまま、気絶するように眠った。
翌日、電車に乗っていると近くに女子がきた。
「どうだい、ブサイクで臭いありのままの僕はどうだい?」
すると彼女は凄まじいシワを眉間に寄せていた。
「これでいいんだ」
今晩も寝苦しい熱帯夜になりそうだ───。
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