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偉大な中国皇帝、唐の太宗が部下と一緒に組織の課題を考えた『李衛公問対』という書物

中国の皇帝の中でも名君の一人として数えられる唐の太宗(李世民)。

最近ではNHKの「100分de名著」に彼の政治姿勢を示した『貞観政要』が取り上げられました。

この唐の太宗は、二代目皇帝ですが唐建国期において戦場で凄まじい功績を上げている武将としても大変有能な人物です。

中国には、武経七書という七大兵法書があり、その中の一つに有名な『孫子』があります。

その『孫子』と並んで七冊の一つに『李衛公問対』がありますが、これは唐の太宗と部下の二人が軍事上の様々な課題・問題を自分たちの事例や過去の歴史上の事例を用いながら問答するという形式を取っています。

以下、一つ話を紹介します。

==以下、引用==
太宗は部下に尋ねた。

「諸葛孔明は『統制の取れた軍は、無能な将軍に率いられても負けないが、統制の取れない軍は、たとえ有能な将軍が率いたところで勝利することはできない』と語っている。私には本質をついた言葉だと思えないのだが。」

部下は太宗に答えます。

「孫子にも『教育が徹底せず、将兵に統制がなく、配置もでたらめな場合を「乱」という』とあります。

古来、統制を欠いた組織が自滅した例は数え切れません。

教育が徹底しないのは、戦い方を将兵にきちんと教え込まないからです。

また、将兵に統制が行き届かないのは、幹部・上司の異動が頻繁で部下を掌握する時間がないからです。

そのため、混乱が生じて敗北を招きます。しかし、これは敵の仕掛けにはまったのではなく、自滅以外のなにものでもありません。

だから、孔明は『統制の取れた軍は、凡庸な将軍のもとでも負けない。統制の取れない軍は、賢明な将軍に率いられても危険に晒される』と言ったのです。この言葉は本質を突いています。」

太宗は頷きながら、

「たしかに兵士の教育訓練は疎かにはできないものだ。」

と言うと、部下も

「教育訓練が行き届いていれば、兵士は命令に従います。逆にそれが不十分だと、どんなに責めても励ましても成果は上がりません。わたくしが古来の軍制を調べて図にまとめているのも、ただ統制の取れた組織を作りたいがためなのです。」
==守屋洋編著『全訳武経七書②「司馬法」「尉繚子」「李衛公問対」』を参考に李の方で修正掲載==

こんな感じで話を進めていくのですが、ご紹介した話以外にも現代に示唆を与える話に充ちています。

組織の悩みというものは、時を超えて共通することが多くありますね。


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