魔法少年☆ワイルドバージン(公開まであと7日)
こんばんは『魔法少年☆ワイルドバージン』共同脚本の今田です。ここまでが苗字です。
この紹介記事を書くのも今回で4回目。紹介熱(紹介と大気がこすれあって生まれる摩擦熱)で体もすっかりあたたまり、ようやくまじめなことを書ける状態になりました。お待たせしてすみません。
ということでいきなりですが、ある日僕は宇賀那さんから「童貞が30歳を超えると魔法使いになる映画を撮るので脚本を書きませんか、一緒に」と言われました。正直軽口だと思いました。良くも悪くも百鬼夜行のこの業界。口約束をまともに受け取っているようでは身が持ちません。というか企画も企画です。バカすぎる。実現しないやつだ。しかしそれからしばらく経ち、宇賀那さんからある連絡が来ました。
「童貞の件、打ち合わせをしたいんですが」
ようやくわたしは悟りました。企画がバカなのではない。その企画を立てた宇賀那さんがバカなんだと。もちろんこっちだってバカなので迷わず脚本チームに入らせてもらいました。
初めての打ち合わせには、宇賀那さん、同じく脚本チームの一員である今村さん、そして意外なことに脚本の第1稿さんが待ち受けていました。第1稿さんを一読すると、すでに起承転結きっちり完成している。「これもうできてるじゃないですか」そう言うと宇賀那さんは深くかぶったサンバイザーのひさしを上げて言いました。
「これ(第1稿)をぶち壊していきましょう」
そこから「回覧板スタイル」の脚本づくりが始まりました。回覧板スタイルとは、第1稿を読んだAが全編を好き勝手に書きかえてBに渡し、受け取ったBも全編を好き勝手に書きかえてCに渡すというストロングなスタイルのこと。来る日も来る日も回覧板をまわすうち、われわれ3人にある症状が出てきました。
誰がどこを書いたのかわからなくなる。
いや、宇賀那さんと今村さんが実際どうだったかはわかりませんが、その時点で宇賀那さんが99歳、今村さんが98歳、わたしが97歳だったことを考えれば、おそらくわたし以外のふたりも自分がなにを書いているのかわからなくなっているのではないかと思います。
「◯◯のシーンはどなたが書いたんですか?」
試写を経て、いろんな方にそう訊かれます。思い出そうと目をつぶると、たくさんの名画が浮かんできます。あのシーンはたしか僕が、そしてあのシーンも僕が書いた気がする。たとえばそれは1942年のアメリカ映画『カサブランカ』におけるハンフリー・ボガードの名ゼリフだったりします。
「君の瞳に乾杯」
あのシーンは僕が書きました。いや待て。あれは今村さんが……いや違う違う。宇賀那さんが……もう、なにも思い出せません。
すみません、とにかくいまのところは、宇賀那健一100歳記念監督作『魔法少年☆ワイルドバージン』をなにとぞよろしくおねがいします。
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『魔法少年☆ワイルドバージン』
12月6日より新宿バルト9、梅田ブルク7にて公開
http://wv-movie.com
ここだけの話、今田を金銭的にサポートできる仕組みができました。お気持ち(100万円)だけでもけっこうです。あなたが読者になっていただけるのなら、あとはもう、ほんの少しの8億円くらいで十分です。