「反芻」魔法少年☆ワイルドバージン(公開まであと4日)

画像1

今田です。娘さんをください。あとこのおにぎりもください。

TAMA映画祭での先行上映も大好評のうちに終了。『魔法少年☆ワイルドバージン』は公開初日に向けて離陸体勢に入り、舞台あいさつ登壇者の9割が髪を切り終えました。さあ、ほかにできることはないか。あります。

今回は脚本チームを無断で代表して『ワイルドバージンを作った9の映画』をご紹介します。平たくいえば今田の目線から見た参考映画9本です。鑑賞前のムード作り、鑑賞後の余韻拡張にぜひご活用ください。ハリー・ポッターシリーズが入っていないのは、ぼくが1本も観ていないからです!

■1『キャプテン・スーパーマーケット』(1993)
クライマックスのめちゃくちゃぶりの参照先はまさにこれ。この作品に限らず、多数の作品が血肉となっています。演出的にもサム・ライミ由来の力みっぷりや過剰さが全編にわたってみなぎりまくり。余談ですが、チャウ・シンチーとサム・ライミは同一人物くらい似ています。

■2『ロボコップ』(1989)
史上もっとも構成のうまい映画のひとつ。バージンズでは荒廃したデトロイトの雰囲気をまったく参考にせず、射撃練習シーンの美しさを参考にしました。ベビーフードを撃ち抜くロボコップとそれに寄り添うナンシー・アレンの言葉にはあらわされない関係性。バージンズではあの人とあの人が……

■3『キッズ・リターン』(1996)
青春のはじまりと同時に映画がはじまり、青春のおわりと同時に映画がおわる。宇賀那監督の長編1作目『黒い暴動』はこれとまったく同じ意味で機能する青春映画でした。しかしよく観ると主人公ふたりが同じ方向に走って同じ壁にぶつかる点はむしろバージンズのほうが似ている。この作品とのちがいはバージンズが圧倒的な「熱」を持っていることです。

■4『黒い暴動』(2016)
■5『サラバ静寂』(2018)
熱と言えば宇賀那。そう言い切っていいと思います。バージンズの前作『サラバ静寂』は音楽が失われた世界を描くディストピアSF。そして前々作『黒い暴動』はガングロ文化に共鳴した女子高生がかつてといまを行き来する苦い青春もの。バージンズが破天荒なコメディであることを考えると、3作まったくジャンルの違うめちゃくちゃな監督です。でも彼がやっていることはすべてまったく変わらない。主人公たちは目の前の見えない壁を「壁ってなんだー!」と体ごとぶつかっていきます。

■6『仔犬ダンの物語』(2002)
ワイルドバージンはもちろんフィクションです。30歳になった童貞はふつう魔法使いにはならない。しかしそもそもフィクションとはなにか。この作品ではプロの俳優ではない小中学生たちがたびたび「泣く芝居」を要求されますが、そのたび彼らは「目をこすって泣いてるっぽく見せる」というアプローチで挑みます。陳腐かもしれない。けれどクライマックスで彼らの目には滂沱の涙があふれている。たとえそれがスポイトで入れたフィクションの涙だとしても、それまでの流れで、観ている側は本当の涙を流すことができます。フィクションとはなにか。

■7『スパイダーマン シリーズ(サム・ライミ版)』(2002-2007)
冒頭でご紹介したサム・ライミ監督。ヒーローものである本作に明確に影響を与えたのは彼が監督したこのシリーズかもしれません。自前のコスチュームをミシンで縫うその姿は等身大のヒーローそのもの。バージンズの星村もやはりミシンを使いますが……

■8『魔女の宅急便』(1989)
ハリポタで影がかすんでしまいましたが「ほうきで空を飛ぶ魔法使い」というイメージがいまなお継承されているのはこの作品の力が大きいです。メインの舞台を空に持っていくことでロードムービーに必要な「距離」を圧倒的に節約した感もあってかっこいいのですが、いちばんおもしろいシーンは鳥かごの中の黒猫ジジが縦に細かくバウンドするところです。

■9『転がるビー玉』
バージンズに続く、宇賀那監督作品です。

と、たくさんの映画を紹介しておいてなんですが『魔法少年☆ワイルドバージン』はどれとも似ていない変わった映画です。脚本打ち合わせのたびに出るめちゃくちゃなアイデアに「それ良いですね!」と言う宇賀那さんはめちゃくちゃに頼もしかったです。けれど実際の撮影台本にそのアイデアが盛り込まれているのと見る危なっかしかったです。いや、その危なっかしさがぼくには頼もしかったです。

---
『魔法少年☆ワイルドバージン』
12月6日より新宿バルト9、梅田ブルク7にて公開
http://wv-movie.com

ここだけの話、今田を金銭的にサポートできる仕組みができました。お気持ち(100万円)だけでもけっこうです。あなたが読者になっていただけるのなら、あとはもう、ほんの少しの8億円くらいで十分です。